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シェイプマシン H1 (1989)

OGM社が1989年(平成元年)に作った、初代の自作シェイプマシン(ロッカーマシン)です。
当時、私は31歳(動画が若い)、ウインドサーフィンの爆発的な流行に伴い、ディック・ブルーワーやジミー・ルイスを始めとする多くのサーフボードの名シェイパーたちがセイルボードのシェイプを依頼されていた時代です。
ウインドサーフィン界では揚力抗力比の改善とコントロール性との両立をシェイパーたちが競い、風の安定したマウイでは毎日のようにR&Dが繰り返されていました。

ボードテストでは同じ失敗を繰り返さないために、ロッカーの数値化が不可欠です。
優れたボードを再現するためにはその数値で作られたロッカーテンプレートを作らなくてはなりません。
ボードの長さが少し変わるだけでロッカーも変わります。
現在のようにコンピュータ制御のシェイプマシンが無かったため、各メーカーは莫大な数のロッカーテンプレートを保存する必要がありました。

このシェイプマシンH1は、コントロールは手動ですが、フレックス性を持ったロッカーガイドに沿ってプレーナーを走らせロッカーをカットする方式のものです。
他のシェイプマシンと異なり、数値で直接ロッカーを管理する方式を持つため、ロッカーテンプレートをいちいち作る必要がなく、当時としては画期的なものでした。

コンピュータで計算した最適な数値をロッカーに用いたり、逆に最速のボードのロッカーを計測し、この機械を使って再現していました。

(動画はカカイ先生の撮影です)

サーフボードの数値化はOGM最大のテーマでした。
当時の設計図というかラフスケッチがこれです。
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MACHINE SHAPE (OGM MATRIX)

マシンシェイプ最大の長所は再現性です。
今使っているサーフボードの良い部分を残しながら修正を加えることで、次に作るボードはあなたにとって確実にベストなものに近づきます。
もしあなたがコンペティターであるならば、私はマシンシェープを勧めます。

現在のコンテストの採点基準では、ジャッジはマニューバーに最大のパワーとコントロールを要求しています。
サーフボードに安心して最大のパワーを加えるためには選手とボードの間に100%の信頼関係が必要です。
ロッカーの大きさ、レールの形、アウトラインのバランス、コンケーブの配置など、サーフボードが高い次元で選手の体型や乗り方に合っていなくてはなりません。
試合シーズン中、そのようなボードを安定して供給し続けるためにはマシンシェイプのように再現性の高いシステムを使って微調整を加え、ベストなボードを作り出す方法が最適だと考えています。

OGMのマシンシェイプは、長さや幅、厚さだけを決めるだけの既製品のボードのことではありません。
最近はサーフボードのボリューム表示が一般的になっています。

「あなたの体重は何kgだから、ボリュームは何リットルが良い」
「長さを短くした分、幅を広げてボリュームをそろえたから大丈夫」
こんな話をよく聞きますが、これはコンビニのコピー機でサーフボードを拡大縮小しているのと同じで、オーダーボードとは程遠いレベルのものです。
たとえ
二人のサーファーの身長、体重、レベルが同じだからと言って、同じボードがベストだというわけではないことを理解すべきです。

マシンシェイプで重要なのは、そのボードのデータがあなたのためにしっかりと調整されているのかどうかです。
マシンを扱うシェイパーには、あなたの要求を数値化し、サーフボードに正確に反映する能力が求められています。

こんなことができます。
OGM MATRIX
はカスタムマシンシェイプです。
今までシェイプルームの中でしかできなかった個別のボードチューニングが離れた所に住むサーファーに対しても可能になりました。
あなたがシェイプルームに来れれなくても、プロライダーと同等のボードの調整を受けることができます。
前回のボードをさらに発展させたり、新しいテイストを加えたりすることであなたは今まで以上に最適なボードを手にすることができます。
たとえば、今のボードは十分気に入っているのだけど、あと少しだけセクションを抜けるためのスピードが欲しいと思った場合、他の部分をまったく変えずにコンケーブだけを深くするとか、テールロッカーだけを弱くするといったことでスピード性を自分に合わせることができます。
また、気に入っているサーフボードのレール形状やアスペクト(縦横比)を変更することで、その乗り味のフィーリングを受け継いだまま小波用や大波用のボードを作り出すことも可能です。

マシンシェイプのボードデータは、病院のカルテと同じです。
前回のボード、前々回のボードなどから的確なボードデザインを推測し、最適なサーフボードを作り出します。
もちろんあなたが過去に作ったボードデータはすべてファイルの中に存在するため、いつでも再現することや、加工することが可能です。

 

HAND SHAPE

あなたは自分に合ったサーフボードに乗っていますか?
自分に合ったサーフボードとは、あなたがうまく乗れるボードのことで、操作性が良く、自分の手足のように自由で快適です。
このようなサーフボードを私たちはマジックボードと呼んでいます。

ハンドシェイプでは、あなたのサーフィンスタイルやレベルをシェイパーが理解し、要望に合わせてあなたにぴったりのサーフボードをシェイプします。
あなたに必要な性能やコンセプトがサーフボードの形の中に盛り込まれていることが重要な要素となります。
ハンドシェイプの最大の長所はシェイプしているボードがすぐ自分の目の前に存在することです。
シェープルームで実物のフォームにアウトラインを描き、実際に切り出して初めてサーフボードの大きさやイメージが実感できます。

目の前のボードから得られる情報の量はマシンシェイプのモニターから得られるものとは比べ物になりません。
マシンシェイプのプログラムにも3Dのシミュレーションソフトが組み込まれていますが、レベルが低く、たとえ解像度の高い大型のスクリーンを使っていたとしても、モニターの中だけですぐれたサーフボードを完成させるのは本当に難しい作業となります。

また、ハンドシェイプの欠点は、再現性が無いため二度と同じボードが削れないことだと言われています。
しかし、ハンドシェイプは毎回、発見と驚きの連続でシェイプはつねに進化します。
私は今まで過去に削ったボードと同じものをシェイプする必要に迫られたことはほとんどありません。

サーフボードはさまざまな曲線の組み合わせで出来上がっています。
曲線が面をつくり、面が3次元的な広がりを持つことで立体となります。
2次元の平面だったアウトラインにロッカーが加わり、デッキのカーブやレールが形成されることで3次元のサーフボードは完成されて行きます。
ハンドシェイプでは、この過程で2次元では認識できなかった3次元的なひずみを発見することができます。
サーフボードの性能はアウトライン、ロッカー、ボリューム、レールフォイルなどの微妙な組み合わせで決まります。

全体のまとまりやラインのつながりをつねに意識しながら作業を進め、アウトライン、ロッカー、ボリューム配分、コンケーブの位置や深さなど、必要とされる性能をサーフボードのフォルムの中に削りこみます。
ハンドシェイプはひじょうに直感的で、そのデザインの根拠はすべてあなたのサーフィンのイメージから来るものです。
だからと言って、それを魂だとかソウルだとか言った訳のわからないもので説明するつもりはまったくありません。
サーフボードを走らせているのは、まぎれもなく物理学です。
そして、ベースとなるものはソウルではなくコンセプトです。

ハンドシェイプは一本一本の完成度を追及するシェイプ方法です。
このようにして出来上がったボードはおそらく二度と同じものをシェイプすることはできませんが、 世界に一本しか無い、あなただけの快適で特別なサーフボードとなります。