浮力と揚力

なぜ小さなボードでも波に乗れるのか?

サーフボードの話になると、よく出てくるのが「浮力」という言葉です。

「このボードはリッター数が大きいから浮力がある」
「もっと浮力のあるボードにした方がいい」

確かに間違いではありません。

ですが実際には、サーフボードを支えている力は浮力だけではありません。

サーフボードには、もう一つ重要な力があります。

それが「揚力」です。

浮力とは何か?

浮力は、水の中に沈んだ物体を押し上げる力です。

サーフボードの容積(リッター数)が大きいほど、より大きな浮力を得ることができます。

そのため浮力が大きいボードは、

  • パドリングが楽
  • テイクオフしやすい
  • 水に沈みにくい

という特徴があります。

初心者向けボードやロングボードが乗りやすいのは、この浮力が大きいからです。

しかし、ここで一つ疑問が生まれます。

なぜ小さなショートボードでも浮くのか?

例えば体重70kgのサーファーが乗るショートボード。

ボードの容量は30L前後しかありません。

単純に考えれば、70kgの人間を支えるには全く足りないように思えます。

それでもサーファーは問題なく波に乗り、スピードを出し、ターンをしています。

なぜでしょうか。

それはサーフボードが走り始めると、「浮力」だけでなく「揚力」が発生するからです。

揚力とは何か?

揚力とは、水や空気の流れによって生まれる力です。

飛行機の翼が空を飛べるのも揚力のおかげです。

実はサーフボードも同じです。

ボードが前進すると、ボトム(ボード裏面)に水流が発生します。

この水流によってボードには上向きの力が生まれます。

これが揚力です。

つまり、

  • 止まっている時は浮力で浮き、
  • 走り始めると揚力でも支えられる

ようになります。

サーフボードは「船」より「飛行機」に近い

多くの人はサーフボードを船のようなものだと思っています。

しかし実際には、スピードが出ている時のサーフボードは飛行機の翼に近い働きをしています。

特に現代のショートボードは、

  • ボトム形状
  • ロッカー
  • コンケーブ
  • レール形状

などを利用して効率的に揚力を発生させています。

だから見た目以上に小さいボードでも走ることができるのです。

浮力だけではボードは選べない

最近はボード選びでリッター数ばかりが注目される傾向があります。

もちろん浮力は重要です。

ですがサーフボードの性能は浮力だけでは決まりません。

例えば同じ35Lでも、

  • 速く揚力が発生するボード
  • なかなか揚力が発生しないボード

があります。

また同じリッター数でも、

  • テイクオフが異常に速いボード
  • 動きは軽いが走り出しが遅いボード

があります。

これは単純な容積ではなく、水の流れをどう作るかという設計の違いです。

シェイパーが見ているもの

シェイパーがボードを設計するとき、単純にリッター数だけを見ているわけではありません。

どの位置に浮力を配置するのか。

どこで水を受けるのか。

どのスピード域で揚力を発生させるのか。

ターン中にどのように揚力をコントロールするのか。

そうした要素を総合的に考えながらボードを作っています。

同じ30Lでも全く別物のボードになるのは、そのためです。

リッター数だけでは見えないもの

サーフボードには大きく分けて二つの力があります。

浮いている時に働く「浮力」。

走り始めてから働く「揚力」。

初心者のうちは浮力の恩恵が大きく、上達するにつれて揚力を活かしたボードが面白くなってきます。

そして本当に調子の良いボードというのは、単に浮力が大きいボードではありません。

必要な浮力を持ちながら、早い段階で効率よく揚力を発生させられるボードです。

リッター数だけでは説明できない「乗り味」の違いは、実はこの浮力と揚力のバランスの中にあります。

サーフボードの設計とは、浮力と揚力をどう組み合わせ、どうコントロールするかを考えることでもあります。

数字では表せない乗り味の差が生まれる理由は、そこにあるのかもしれません。

OGM “ogama” 小川昌男