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4マンプライオリティー(その3)

4マンプライオリティー(その3)

今回はプライオリティー(優先権)を手に入れる方法について説明します。
波に乗ることによって優先権を使ってしまうと、その選手の持っていたプライオリティーは無くなってしまいます。
次に新しくプライオリティーを手に入れるためには沖のラインアップに戻らなくてはなりません。
正確には「ラインアップ」では無く、ルールブック上では「プライマリーテイクオフゾーン」と書かれています。
これは、最初に波に乗る(乗った)エリアのことです。
たとえば、選手が波に乗ってエリアの端の方まで行き、その位置からそのまま、まっすぐ沖に出たとしてもそのポジションはプライマリーテイクオフゾーンからはずれているので優先権は与えられません。
プライオリティーを得るためには、しっかりと乗り始めの位置に戻ることが必要です。

もう一つ、選手たちが優先権を手に入れるため、パドルバックを競い合う姿を見たことがあるかと思います。
これはプライマリーテイクオフゾーンに戻った順番で高い優先権が得られるからです。
どちらが先に沖のエリアに戻ったのかを判断しているのは岸にいるプライオリティージャッジですが、ほとんど同時でどちらが先だったのか判別しにくい時があります。
この場合、ルールブックでは最後にプライオリティーを持っていなかった方の選手に高い優先権を与えることになっています。

4マンプライオリティー (その2)

前回の4マンプライオリティーの記事に関して何件かの質問があったので、システムについて少し解説します。
ただし、これはあくまでも観客レベルでの説明で、試合に出場する選手やコーチには不十分です。
ルールブックを読むといろいろなシチュエーションに対して細かく載っていますので、選手は必ずそちらを参照してくださいね。

 

プライオリティールール
通常のサーフィンの試合では波の奥側を確保した選手にその波に乗る権利が与えられていますが、これに対して選手のポジションに関係なく順番に波に乗る優先権を与えようというのがこのプライオリティールールです。
このルールが適用されることで選手どうしの波の取り合いがなくなり、優先権を手に入れた選手は、自分の好きな波を、好きな場所からテイクオフできることになります。

今までプライオリティールールはマンオンマンヒートでのみ使われていたのですが、最近のWSLの試合では4マンヒートでも採用されることが多くなっています。
来週から千葉県一宮で行われるWSL Ichinomiya Chiba Openでもこの4マンプライオリティーシステムが使われますので、ちょっとだけアタマに入れておいて頂けると楽しく観戦できると思います。

 

4マンプライオリティーシステム
このシステムは各ヒートスタート直後、4名の選手の優先順位が確定する間の部分に少しだけわかりにくいところがあります。
今回はそのあたりを中心に説明したいと思います。

  1. ヒートスタート時
    沖のテイクオフゾーンに4名の選手がそろった時点でヒートがスタートします。
    まだ誰もプライオリティーを持っていないので、通常の4マンヒートと同じように選手は自由にパドルすることができます。
    この時点でプライオリティーパネルは次のようになっています。スタート
  2. 最初にレッドの選手が波をつかまえ、ライディングをしたとします
    レッドに4thプライオリティーが与えられ、パネルはこのように変わります。(実際にはレッドがライディング後、沖のテイクオフゾーンへ戻った段階でプライオリティーが与えられます)
    ホワイト、イエロー、ブルーの各選手は互いに優先関係はありませんが、この3選手はレッドに対してだけ優先権を持っていて、この段階ではその優先権を失うことなく自由にパドルすることができます。
  3. 赤次にホワイトの選手がテイクオフしたとします
    ホワイトがライディングしたので、ホワイトの選手に4番目の優先権が与えられ、そしてレッドの優先権は一つ上がり3rdプライオリティーに変わります。
    レッドはホワイトに対してだけ優先権を持っていますが、もしレッドがパドルして波に乗り損なうとホワイトと優先権が入れ変わり、4番目に落ちてしまうことになります。
    この段階でもイエロー、ブルーの2選手は波をつかまえるため自由にパドルすることができます。
    そして2選手間では優先関係はありませんが、レッドとホワイトに対しては優先権を持っています。
  4. 赤白3番目にイエローの選手がテイクオフしたとします
    3番目の選手が波に乗った時点で、最後まで沖に残ったブルーの選手が自動的に1stプライオリティーを得ることになります。
    パネルが次のように変わり、ここから正式な4マンプライオリティーがスタートします。

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4マンプライオリティーの基本ルール

  • 1stプライオリティーを持った選手は他のすべての選手に対して優先権を持ちます
  • 2ndプライオリティーを持った選手は3rd、4thプライオリティーの選手に対して優先権を持ちます
  • 3rdプライオリティーを持った選手は4thプライオリティーの選手にだけ優先権を持ちます
  • すべての選手は波に乗るためにパドルをしたり、テイクオフした時点で優先権が無くなります
  • プライオリティーを無くした選手は、沖のテイクオフゾーンに戻った時点で4thプライオリティーを手に入れることができます

 

 

4マンプライオリティー

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2016年バリ島クラマスで行われたJPSAショートボード第1戦で、日本のサーフィン史上初となる4マンプライオリティーが導入された。

通常の4マンヒートでは、波の奥側にいる選手がその波に乗る権利を得るというルールのため、選手は相手にプレッシャーを与えながら奥のポジションをキープしようとする。
そのため選手同士が波を取り合って接触したり、2人の選手がインサイドポジションを競い合って波の奥に入り過ぎ、2人ともその波を逃してしまったりすることが少なくなかった。

この新しく導入された4マンプライオリティーというシステムは、波に乗る優先権を選手に順番に与えるというルールがベースとなっている。
このシステムでは、波のブレイクの形や選手のポジションとは関係なく、沖のテイクオフゾーンに到達した順番によって優先権が与えられ、権利を持った選手は好きな波に自分の思っている最適なポジションからテイクオフし演技することができる。

このことは試合から事実上、波の取り合いが無くなることを意味する。
プライオリティーシステムでは、沖に波が入ってくる以前から優先権が確定していて、その権利の順番がカラーパネルによってハッキリと表示されている。
実際に今回のコンテストでは選手同士の余計なハッスリングはほとんど無くなり、試合はかなり紳士的なものとなった。
波の取り合いもゲームとして面白いという意見の方もいるのかも知れないが、フィギュアスケートや体操競技などと同じようにサーフィンも純粋に演技だけを評価する時代が来ているのではないだろうか。

また、見ている人たちにとって、このシステムはわかりやすくとてもすっきりしたものに映るはずだ。
インターフェアなどの状況が起こったとき、その時点での優先権を判断するのは専門家でも難しい。
スコアーポテンシャルがレフトにあるからこちらの選手に優先権があるだとか、この時はマルチピークシチュエーションだから先に立ち上がった選手に優先権がある、などといった複雑なルールの説明を一般の人が聞いてもなかなか理解するのは難しいと思われる。

オリンピックに向けて、一般の人にわかりやすいというのはこれから非常に重要な要素になってくるだろう。

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4マンプライオリティールール
ルールについてはルールブックに書かれていることがすべてなので、ここで誤解が起こることのないように下手な解釈や解説をすることは避けたい。
しかしながら、プライオリティーがどのように決められているかというルールを選手自身が理解しないで、カラーパネルの指示通りに波に乗れば良いなどと考えているのだとしたらその選手はとうてい勝ち上がることはできないだろう。

プライオリティーが確定し、パネルが完全に入れ替わった状態で1本の波が入って来るような落ち着いた状況であれば何も問題は無い。
選手はカラーパネルで示された順番に従って波に乗ればよい。
しかし、実際の海では波は必ず何本かまとめて入ってくる。
誰かがパドルしたり波に乗ったりすればプライオリティーは目まぐるしく入れ替わる。
つまりセット2本目の波の優先権はすでにそのカラーの順番にはなっていないということだ。
ここで入れ替わるのはファーストプライオリティーだけではない。
セカンドプライオリティーやサードプライオリティー、あるいは4番目のプライオリティーまで含め、選手がパドルするだけで、いろいろな場所で入れ変わりが起こってくる。
カラーパネルにはタイムラグがあり、アナウンスも状況によっては追いつかないこともあるだろう。
加えてオンショアーが強ければ聞き取ることも難しい。

自分が何番目のプライオリティーを持っていて、あの波に2人の選手がパドルしたのだから、この次の波に対して自分が何番目のプライオリティーになっているのかなどは自分自身でしっかりと把握できている必要があるだろう。
パネルが変わるのを待っていたのでは波は行ってしまう。
優先権を持っているのに乗らなければ、他のサーファーが乗ってしまうだろう。
権利を持っていないのに波に乗って、他の選手の邪魔をすればインターフェアを取られてしまう。
しかもプライオリティーインターフェアのペナルティーはハーフカットではなく、ワンウエイブイブカットなのでまず勝ち目は無くなる。

4マンプライオリティールールの中には専門的な用語や複雑でわかりにくい部分も含まれているが、良い波を手に入れるためには、選手にとってこれから最も重要なルールになってくることはまず間違いない。

4マンプライオリティーはWSLのQS下位グレードの試合でもすでに導入が始まり、世界的にはサーフコンテストの標準的なシステムになりつつある。
JPSAでも今後、採用される試合数がどんどん増えていくと思われる。
おそらくアマチュアの試合も例外とはならないだろう。

選手はルールブックをしっかり読んで理解し、今後の試合にぜひ役立てて欲しい。

 

追記

今回のクラマスの試合で、残念なインターフェアが1つあった。
ヒート終了間際で負けている選手が明らかにわざと優先権を持つ選手に対してドロップインしたことだ。
マンオンマンヒートでは稀に見られる行為だが、これは自分が負けることと相手が勝つということが同じだからだ。
マンオンマンだったら良いというわけではないが、選手の気持ちを考えるとまだ理解できないわけではない。
これに対し、4マンヒートでは、選手はこれを絶対にすべきでないと考える。
4マンヒートでは、自分が負けるということと相手が勝つということは同義ではない。
ドロップされた選手にとって、その波をメイクできるかできないかは非常に大きな違いがある。
その波をメイクできればまだ勝ち上がるチャンスが残されているからだ。
すでに勝ち上がるチャンスのなくなったプライオリティーシチュエーションで、自分がインターフェアで負けるのならまだしも、他の選手が逆転できる可能性も一緒に奪ってしまうのは最低の行為だと考える。
マナー的にも安全面からも絶対にやめてもらいたい。

 

 

 

スコアーのしくみ(その5)

スコアーのしくみ5

ジャッジの仕事は「上手いサーフィンにより高いポイントを与える」ことです。
これは世界最高峰のWCTでも、ローカルコンテストでも変わりません。
では、その上手さとは何を基準に判断しているのでしょうか?

ルールブックの中にはジャッジが何について判断し、どのようにスコアーを決定すべきなのかを明確に書いた「ジャッジ基準」というものが存在します。

ジャッジ基準は選手とジャッジとの間で交わされた採点に関する取り決めで、ジャッジはこの基準に一番近いサーフィンをした選手に一番高い得点を与えなくてはなりません。
最近の基準はリッピングの回数やカットバックを何回したとか、ライディングの距離や時間などといった誰にでも解るようなものではなく、マニューバー自体の難易度や完成度を評価する高度なレベルのものに変わってきています。
ジャッジには、単に事務的な能力だけでなく、サーフィンをより深いレベルまで理解し、ジャッジ基準をしっかり把握した上での採点が求められています。

ジャッジ基準
これが世界中で行われるほとんどの試合でベースとなっている「WSLジャッジ基準」の最新版です。
プロもアマチュアクラスもビギナークラスでもすべて同じものが使われています。

2016 WSL Judging Criteria
Surfers must perform to the WSL judging key elements to maximize their scoring potential.
Judges analyze the following major elements when scoring a Ride:

  •  Commitment and degree of difficulty(コミットメントと難易度)
  •  Innovative and progressive manoeuvres(革新的で進歩的なマニューバー)
  •  Combination of major manoeuvres(メジャーマニューバーの組み合わせ)
  •  Variety of manoeuvres(マニューバーの多様性)
  •  Speed, power and flow(スピード、パワー、フロー)

NOTE: It’s important to note that the emphasis of certain elements is contingent upon the location and the conditions on the day, as well as changes of conditions during the day.
NOTE: The following scale may be used to describe a Ride that is scored:
0–1.9 = Poor;  2.0–3.9 = Fair;  4.0–5.9 = Average;  6.0–7.9 = Good;  8.0–10.0 = Excellent

ジャッジ基準には独特の用語が使われています。
ツアージャッジ達が実際のジャッジルームの中で使っているニュアンスをもとに、解釈のポイントを説明しますので、ぜひこの基準を自分のものにしてください。

コミットメント(積極性)
ジャッジの間では、高いリスクを払っているかどうかを見極める重要な言葉として、しばしば登場します。
波の最もきびしいセクションに果敢にアタックするマニューバーには特に高いスコアーを与えています。
また、1つのライディングの中で、いつ、そのマニューバーを行ったのかも得点に影響します。
難しいマニューバーをライディングの最初に入れる方が最後に入れるよりリスクの高いのは明らかで、ジャッジがファーストマニューバーを重視するのはこのためです。

難易度
ジャッジはマニューバーの難しさに得点を与えます。
マニューバーの回数やライディングの長さではなく、技術のレベルをスコアーで表現します。
マニューバーの量ではなく、質が重要です。

革新的で進歩的なマニューバー
今までに見たこともない新しいマニューバーや、現在のマニューバーをさらに進化させたものに挑戦してほしいという願いを込め、高い評価をしています。

メジャーマニューバーの組み合わせ
マニューバーを組み合わせること、そのつながり、連続させることの難しさを評価に加えています。

マニューバーの多様性
サーファーが同じマニューバーを何回も繰り返す単調なものではなく、ジャッジは1つのライディングの中に多種類のマニューバーを要求しています。

スピード、パワー、フロー
スピードとパワーについては、トラックの深さ、レールの寝かせ方、スプレーの大きさなどから判断できるはずです。
すべてのマニューバーの判断の基本となる部分です。
フローは、マニューバーのつながりと共に、クリティカルなセクションの使い方や、波を読んだ的確なマニューバーの組み立て方なども評価の対象としています。

NOTE:
そして最後に注意として、ジャッジ基準の中のどれを重視するかは、その試合の行われているロケーションや、その日のコンディションによって変化すると書かれています。

たとえばトラッセルズのようなポイントでは、革新的で進歩的なマニューバーやその多様性が大きく評価されています。
それに対してパイプラインなどのきびしい波では、エアリアルなどではなく、チューブの深さやテイクオフのポジションなどをコミットメント(積極性)や難易度を使って高く評価します。
また通常の試合では、波の大きさの違いをあまり評価に加えていませんが、ワイメアのような特別に大きな波での試合の場合は、波のサイズが重要な要素となります。
巨大な波にテイクオフするサーファーというのは、最大級のコミットメント(積極性)を示すこととしてジャッジは高く評価しています。

 

スコアーのしくみ(その4)

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下駄を履かせてはいけません。
採点で10点満点をフルスケールで使うということは、良くないサーフィンにも高い点を与え、スコアー全体を引き上げると言う意味ではありません。
良いサーフィンにはより高く、良くないサーフィンにはハッキリとした低い点数をつけ、スコアーにメリハリをつけると言う意味です。

ふつうのマニューバを何回も繰り返したライディングに高い点数がつき、グッドスコアーになってしまうことがあります。
また、レールのあまり使われていないマニューバが繰り返されているのに、アベレージスコアーを使ってしまうこともあります。
ジャッジはマニューバの回数やライディングの長さにまどわされてはいけません。

良いマニューバが入ったライディングがグッドスコアー、
エクセレントなマニューバが入ったライディングがエクセレントスコアー、
ふつうのマニューバだったら、アベレージスコアーを使います。

同じグレードのマニューバが何回連続で繰り返されたとしても、その採点スケールの範囲の中で評価を考えます。
決してその採点のカテゴリーを飛び越えた上のスコアーを使わないようにします。
これを守るだけでスコアーが非常にスッキリとしたものとなります。

レールの入っていないプアーなマニューバを何回繰り返してもプアースコアーにしかなりません。

これが前回話した、
「すごいマニューバ1回するのと、ふつうのマニューバ3回するのとでは、どっちの点が高いの?」
の明確な答えです。

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ジャイアント馬場の16文キックはエクセレントスコアーですが、グレート東郷の塩まき目つぶしや、ミスター珍の下駄攻撃はプアースコアーでお願いします。

もし自分のスコアーが伸びないなと思ったら、そのマニューバがあまり評価されていないということです。
ジャッジはマニューバの難易度に点数をつけています。

ジャッジ基準を読み返してください。
そこには高いスコアーを得るための答えが書いてあります。

  • スピード、パワーは十分ですか?
  • マニューバのつながりはどうですか?
  • レールはしっかり使われていますか?
  • コミットメントはありますか?
  • マニューバのポジションはどうですか?
    波のクリティカルな場所を逃げていませんか?
  • その技は革新的で進歩的ですか?
  • マニューバの種類は豊富でしたか?
  • コントロールはどうですか?
    バランスはくずれていませんでしたか?
  • そのセクションで行ったマニューバは最適でしたか?
    もっとぴったりの良いマニューバはありませんでしたか?

ケリースレーターだって同じ基準で採点されています。
ジャッジはジャッジ基準に従って採点します。

スコアーのしくみ(その3)

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ジャッジをしていると、選手からこんな質問を受けます。
「すごいマニューバ1回するのと、ふつうのマニューバ3回するのとでは、どっちの点が高いの?」
ジャッジ基準には、マニューバの量ではなく、質(クオリティー)に点数をつけるとはっきり書かれています。
したがって、むずかしいマニューバの入っているライディングに高いスコアーが付くことになります。

ジャッジは、採点スケールにしたがってスコアーを決定します。
採点スケールとは、ジャッジシートの隅に書かれているグッドとかエクセレントとか書かれているコレのことです。

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ライディングのマニューバを分析し、
良いライディングだなと思ったらグッドスコアーの中から、
ふつうのライディングだなと思ったらアベレージスコアーの中から、
その採点スケールの範囲の中で最適なスコアーを決定します。

ジャッジは点数にはっきりとした差をつけるため、2点や3点の低い点数で勝敗を決めるのではなく、なるべく10点満点のスケールをいっぱいに使って採点するように教育を受けています。
この採点スケールは、スコアーに幅を持たせるためにも非常に有効です。

たとえば、あるライディングに対し、ジャッジが5点をつけたとします。
ヘッドジャッジがたずねます。
「今のライディング、どうだった?」
そのジャッジは、
「良かったよ。」
と答えたとします。
すると、ヘッドジャッジは、
「良かったと思うのだったら5点じゃなくて、採点スケールのGood (6.0~7.9)の中でスコアーすればもっと幅広く10点満点を使えるよ。」
とアドバイスするでしょう。

ジャッジが10点満点のスケールを幅広く使うことによって実力のある選手が勝ち上がる確立が高くなります。
プロの試合でグッドライド(6.0~7.9)のスコアーを出すことは容易ではありません。
おそらく1本のライディングの中に、難易度の高いマニューバを最低1~2回ほど組み入れる必要があるでしょう。
これは、実力のあるサーファーでないと出せないスコアーです。
それに対して、3ポイント程度のスコアーは1本のライディングの中に簡単なマニューバを1回入れれば出せてしまいます。

何らかの事情で、その上手いサーファーがヒート時間内に、うまく波にめぐりあわず良いライディング1回しか乗れなかった場合、もしそのスコアーに5点しかついていなかったとすると、簡単なマニューバが1回しか入っていない3点ライディングを2本乗った選手に合計で負けてしまうのです。
もしエクセレントなサーフィンにジャッジが7点しか出すことができなければ、アベレージな4点のライディングを2本乗った選手に負けてしまうのです。

このように、評価を誤ると試合結果が違ったものになってしまいます。
われわれジャッジは、ライディングに含まれるきびしいマニューバを正しく評価し、素晴らしいサーフィンを行った選手がしっかりと勝ち上がって行けるジャッジングをめざしたいものです。

スコアーのしくみ(その2)

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「残り時間1分!」
「ホワイトの選手乗りました、2位レッドの選手を逆転するために必要なスコアーは
5.18ポイント!」

そんな時、ジャッジは何を考えているのかを話しますね。
これはあくまでも私の点数の決め方ですが、他のジャッジたちもたぶん似たようなことを考えてスコアーしていると思います。

まず逆転スコアーの5.18ポイントですが、アナウンスがずっとガンガン言っているのでとうぜん頭の中に入っています。
でも、私は自分がこのスコアーを入力したら逆転するとか、しないだとか、あまり深く考えていません。
なぜなら、発表されるスコアーは他のジャッジと作っている平均点なので、自分の点数だけでは決まらないからです。
しかも、大きすぎるスコアーや小さすぎるスコアーは、コンピュータにはじかれてアベレージに反映されなくなるシステムになっています。

この時、私たちジャッジがすべきことはただ一つ、冷静に考え、自分の意見としてのスコアーを入れることだけです。

ヒートが始まったばかりであれば、わりと広い範囲の中でスコアーを決定できますが、ヒート終了間際になって来ると、ジャッジシートの中にたくさんの確定したスコアーが存在してきます。
ヒートの後半で新たなライディングをスコアーするときは、すでに入力した自分の点数ををしっかりと考慮しながら採点しないと試合の結果を違ったものにしてしまいます。

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上のスコアーシートを見ながらさっきのシチュエーションを考えてみます。

終了間際に乗ったホワイトの選手のライディングが5.0点あたりに来るだろうなと思ったならば、それと近いライディングだと考えられるイエローの3本目の5.0点ライドがどのような内容であったかを頭に思い浮かべてみます。
「最初のマニューバはちょっと甘かったけど、2回目のはわりときびしかった。3回目のカットバックも悪くなかったな」
こんな感じです。

それに対して今回乗ったホワイトの6本目のライディングを思い出してみます。
「なかなか良いターンも入っていて、うまくまとめたライディングだったけど、イエローの2個目のマニューバのようなきびしいターンは入っていなかったぞ」
ここで私は5.0点以上出せないことを認識します。
この段階で少なくとも私のスコアーシートの中では、ホワイトの逆転は無くなりました。

こんどはその下のスコアーであるレッドの4本目の4.5点ライドと比較してみます。
「たしかきれいなコンビネーションのターンだったけどパワーが足りなかったかな、あのレッドのライディングよりも今回のホワイトの方が良いサーフィンだと思う」
これでホワイトには4.5点以上のスコアーを入れるべきだという結論に達します。

その考えからすると、私がホワイトに対して使えるスコアーは4.6、4.7、4.8、4.9しかありません。
イエローのライディングに近ければ4.8を、レッドに近ければ4.7を、限りなくイエロー近いと思えば4.9を使います。
このようにヒートの後半では、使えるスコアーがかなり限定的なものとなってきます。
ジャッジはライディングの雰囲気や思いつきでスコアーを決定しません。

スコアーは互いに違いますが、他のジャッジたちもそれぞれこんなことを考えながらスコアーを付けています。
そして、上下2人のスコアーはカットされ、真ん中3人のスコアーの平均点が発表されます。
このときホワイトの選手が逆転するとかしないとかは、ジャッジ個人の意識の中にはありません。

このようにして付けられているスコアーは、1本1本バラバラに付けられているスコアーと違って、あるときにはきびしく、あるときには甘く感じることが起こるかもしれません。
良く観客の中で、
「今のライディングは最低でも5.2ポイントはあったはず、このジャッジの点数はおかしい」
などと評価する人がいますが、そのライディング1本だけではなく、そのヒートの最初から最後まで、すべてのスコアーを見てもらえれば、妥当なスコアーだったということがわかっていただけると思っています。

スコアーのしくみ

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「あれおかしいなー、いつもだった5,6点は出るのに、4点か〜、
今回のジャッジ、ひょっとして俺のこと嫌いなのかな〜?」
よくこんな話聞きますよね、でも大丈夫、安心してください。
ジャッジは好き嫌いで点数をつけません。

しかし、ジャッジのスコアーが同じライディングに対して変わってしまうことは起こりうることなのです。
今回はサーフィンの技術的な部分は抜きにして、どうしてそういうことが起こるのか、スコアーのしくみの部分から説明してみます。

サーフィンのジャッジは何をしたから何点という点数のつけ方をしていません。
オフザリップ2回してカットバックしたから5点だなんて言う決まりは何もありません。

10点満点についても同じです。
たとえば
WCTの選手が乗るパイプラインやタヒチのものすごい波での10点もあれば、同じWCTでもオンショアのジャンクな腰波での10点もあります。
この2つのライディングはまったく違ったものなのに同じように10点が使われています。
もう一つはディビジョン(クラス)が違う場合です。
プロクラスでの10点もあれば、ビギナーズクラスの10点もあります。
当然それらのライディングが大きく違うことはお分かりになると思います。
でもここで、一つだけ確かなことがあります。
これらすべての10点ライディングは、その日の試合の中で一番上手かったサーフィンだったと言うことです。

サーフィンの採点では、波のコンディションの違いによってサーフィンのパフォーマンスが大きく変わってしまうため、絶対評価ではなく相対評価を使っています。
相対評価は比較して評価するスコアーです。
新しいライディングに対して、ジャッジはスコアーシートの中でそれに一番近かった(クオリティーが一番似ている)ライディングを思い出しながらスコアーを考えます。
今のライディングがその基準のライディングより良かったと思えばそれより高いスコアー、悪かったと思えばそれより低いスコアーを入れます。
例えばこんな感じです。
今のライディングはRed3本目につけた4.5点のライディングより良くて、Yellow2本目につけた5.0より悪かったので4.7点をつけるとか言った感じです。

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ジャッジは雰囲気や気分、思いつきで点数はつけません。
ライディングを記憶して、スコアーを思い出し、そのマニューバを分析し、スコアーシートに書き、コンピュータに入力します。
記憶があいまいな場合はリプレイシステムを使って検証します。
これをヒート中ずっと繰り返します。

4点しか出さなかったのは、他の選手が乗ったそれより良いライディングに対して4.5点のスコアーがすでに確定しているからです。
もし6点出たとすれば、それより悪いライディングに対してすでに5.5点のスコアーを与えているからです。
ただこれだけの理由です。
ジャッジにはその選手が好きだとか嫌いだとか考えているヒマはありません。

試合中は1つのライディングのスコアーに一喜一憂せず、もし自分のスコアーが伸びないなと思ったら相手のサーファーが自分より良いライニングをしているのだと解釈してください。
相手のサーファーより良いライディングをすることで、それより高いスコアーを手にすることができるのです。

 

レールサーフィン

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短くて幅が広く、丸くて平らなサーフボードに乗れば誰でも簡単にすぐ曲がり、小さな波だったらスープやリップに当てることができるかも知れません。
サーフボードをフラットにしたままボトムの腹を使って曲げるので、ボードが走っていなくてもノーズの向きはコロコロ変わります。
このようにノーズを左右に振る動作をYaw(ヨー)と言います。
もちろんこれもサーフィンなのだと思いますが、私たちジャッジはまったく評価しません、レールが何も使われていないからです。
何度も言いますが、サーフィンのターンはYaw(ヨー)じゃダメです。

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どこかの誰かの写真をお借りしました、ありがとうございました。

このケリーのカットバックの写真を見てください。

ちょうどリップのところにこのカットバックのトラックの始まりが見えますが、ケリーのボードのノーズが180°向きを変えるまでにボードの走った距離(トラックの長さ)は楽に5m以上、ひょっとすると10m以上あるのではないでしょうか。
本物のサーファーのカットバックというのはノーズをただ横に振るだけのようなコンパクトなものではなく、想像しているものよりずいぶん大きなものだと考えてください。
波のトップからボトム、カール際からショルダーまでかなり広いスペースを使っています。

これに対してノーズを左右に振るサーフィンでは、わずか1m四方ほどの広さの中でマニューバを行っています。
落ちてきたリップにボードを当て、今まで走って来た方向にノーズの向きを変えて、オフザリップもカットバックも自分の頭の中では完璧にできていると思っていますが、まわりの人は誰も気づきません。
ボードが走っていないのでトラックは何も残りません。

オマケですが(本業はシェイパーなので)、この写真のときケリーのボードがどのくらいロールしているのかを、シェイププログラムを使って確認してみました。
シェイプルームの中のボードに、この写真と同じような角度に見えるまでRoll(ロール)とPitch(ピッチ)を加えてみました。
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2番目の画像は、視点を移動しボードをノーズ側から見たものです。
想像以上にボードがRoll(ロール)している(傾いている)ことがわかります。
また、曲がるためにはロッカーが非常に大切だということに気づくと思います。
そして、このターンの重要な要素であるRoll(ロール)とPitch(ピッチ)を安定して維持するために、
十分なボードスピードから来る遠心力と、レールのフォイル、ボリュームのバランスが大きな役割を受け持っています。
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良く走るサーフボードが曲がらないなんてウソです。
ボードは走ることで曲がります。
サーフボードが曲がるのは、Roll(ロール)して(傾けて)走った結果です。
そして曲がるための重要な要素はロッカーです。

これがレールサーフィンです。
サーフィンの基本はボードスピードです。
止まったサーフィンから卒業しましょう。

コンペティションボードについて

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私はサーフィンを見るのが好きだ。
特にうまいサーファーのサーフィンを見るのは最高に気分がいい。
サーフィンを見たいからジャッジになったわけではないが、いったん足を突っ込むと真剣にのめり込んでしまう性格のため、1994年にJPSAから依頼されて始めたこの仕事も、WSL(ASP)も含めるとプロコンテストのジャッジだけで年間100日を越え、それをすでに20年以上も続けていることになる。

しかし、私はジャッジである前にシェイパーなので、真っ先に目の行ってしまうところは、いろいろなセクションで選手がどのようにボードをコントロールしているのかであったり、マニューバーにおけるレールの使われ方であったりする。

上手い選手がきれいにサーフボードを使う姿を見ることは本当に気持ちが良い。
絶妙なレールの入りぐあい、ストレスの無いターンのつながり、見ていて惚れ惚れしてしまう。
また逆に、余計なお世話なのだが、マニューバーの途中で突然レールが引っかかってワイプアウトしたり、本来抜けれそうなセクションが抜けられなかったりする選手を見ると、その選手の使っているボードが本当に彼に合っているのかなど、ついつい気になってしまう。

こんなことを1日10時間、年間100日、20年以上もやっていると、ほとんど1本のライディングを見ただけで、その選手とボードの関係性が見えてくる。
もう少しだけスピード性の高いボードに乗り変えれば、この選手はずっと見栄えが良くなるだろうなとか、もうちょっとロッカーを強くすれば、さらにマニューバーのクオリティーが上がるだろうなとかである。

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午前中、クリーンなコンディションで最高の調子を保ち何ラウンドも勝ち上がってきた選手が午後になって風がオンショアに変わるやいなやボードスピードが極端に落ち、調子を崩して敗退してしまう選手がいる。
明らかにボードのアンダーボリュームが原因だ。

しっかりとしたコーチがいれば、オンショアの波のパワーダウンに対して選手にボードのチェンジを勧めるのだろうが、今まで調子良く勝ち上がってきたボードを自らチェンジするのは非常に勇気の要ることで、結果的に敗退してしまう選手が多い。
これは私のライダーたちにも言えることであるが、もちろん試合中は選手たちとジャッジは会話できる状況にないので、いつも試合終了後での反省となってしまう。

WCT選手の使っているボードは、最高のパフォーマンスを引き出すために、よぶんなぜい肉(浮力)を落とし、バリバリにチューンされたF1マシンのようだ。
最高のサーフポイントと十分なコンテスト期間、選手は最高の波で演技することだけを考えてボードを選択すれば良い。
しかも、試合中はしっかりとしたプライオリティーシステムが確立されているので、テイクオフの速さを競ったり、波を取り合ったりする必要もない。
ここでは反応の早い、ローボリュームのサーフボードが真価を発揮する場所だ。

これに対して、WQSや日本国内の試合では、試合期間が短く、良いコンディションを待っているだけの余裕がないため、小さな波でも試合することを想定したボードが必要だ。
しかも4メンヒートが主体となるため、パドルの速さやテイクオフの早さも考慮したボード選びとなるだろう。
WCT選手のようにたくさんのボードを持つことのできないサーファーにとっては、1本のボードでどれだけ幅広く波に対応できるかどうかが重要なポイントとなってくる。
信頼できるシェイパーとコミュニケーションをとり、さまざまなコンディション、幅広い波のレンジで自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるボードを手に入れることが大切である。