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上達するサーフボード(中級者編)

安定して波をつかまえることができるようになってくると、次はいよいよマニューバーの出番です。
マニューバーには、ボトムターン、トップターン、オフザリップ、フローター、カットバックなどたくさんの種類がありますが、じつはサーフィンのマニューバーのほとんどは左右のターンの組み合わせで成り立っています。
つまりフロントサイドのターンとバックサイドのターンの2つを完全にマスターしてしまえば、それだけでほとんどのマニューバーをメイクすることができるのです。
このレベルのサーファーに必要なボードは安定した速度を保ちながら右と左のターンを正確に行えるサーフボードです。

初級者がサーフボードを選ぶのに重要だったのはボードの長さと浮力でした。
沖へ向かうためのゲティングアウトや、波をつかまえるためのテイクオフでは、サーフボードの速度が比較的遅いので、ボードにはほとんど揚力が発生していません。
この段階では、ボードの体積から生まれる浮力がサーフィンを支配していました。

中級者が上達するためには、さらに1ランク上のレベルで自分に合ったサーフボードを手に入れる必要があります。
サーファーがテイクオフし、ボードにスピードがついてくると、サーフボードには揚力が発生します。
揚力はボードが走ることによって主にボトムの接水面から発生する上向きの力で、非常に大きな力です。
たとえば体積が26リットルのサーフボードの浮力は26kgしかありません。
もしあなたの体重が65kgだとすると、ライディング中、浮力を差し引いた残りの39kgを支えているのはボードが走ることによって生まれる揚力だということです。(実際にはサーフボードがすべて水の中に沈んでいるわけではないので、揚力の占めている割合はさらに大きな数値となります)

この揚力は浮力と違ってとても扱いづらく、ボードの速度が変わると大きさが変化してしまいます。
実際には速度の2乗に比例して揚力は大きくなるので、ある速度で安定して走っていたサーフボードが、波の大きい時やセクションを抜ける時などで、ボードの速度が2倍になると揚力は4倍になってしまうのです。
体重は変化しないので、この時あなたの体を支えるために使われているボードの接水面積は4分の1になっているということです。

この接水面の減少はサーフィンの不安定さとなって現れます。
たとえば小波用のテールの広すぎるボードなどで大きい波に乗った時にノーズがパタパタしてボトムターンができなくなった経験を持つサーファーは少なくないと思いますが、これがその現象です。

ターンの安定していない中級者には、ボードの速度変化がコントロールに影響しにくいサーフボードを選ぶことが重要です。
サーフボードにはボリューム以外にアスペクト(縦横比)やロッカーの強さ、ワイデストポイントの位置、テールの広さ、ノーズの広さなどたくさんの重要なスペックがあります。
レールの厚さやタイプも非常に重要です。
これらを微妙に調節し組み合わせることで揚力を制御します。
もちろんボリュームも大切な要素ですが、同じボリュームでも乗り味の違うボードは無限に存在します。
マシンシェイプの普及とともに、最近サーフボードのボリュームの表示が増えていますが、
「長さを短くした分幅を広げてボリュームを同じにしたから大丈夫!」
なんて言えるほど簡単なものではないことを大多数のサーファーが気づいています。

自分に合っていないサーフボードでいくら練習してもサーフィンは上手くなりません。
上達への近道は、あなたのサーフィンをよく知る人の意見を聞き、自分にぴったりのサーフボードを早く手に入れることです。

上達するサーフボード(初級者編)

 

 

 

 

 

上達するサーフボード(初級者編)

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サーフィンを始めたばかりの初級者が早く上達するサーフボードとはどんなものなのでしょうか?
これには、「絶対にロングボード」だという人もいれば、「少し短めで十分な浮力を持ったボード」だという人もいます。
いろいろと意見が別れますが、波のコンディションや体重、年齢の違いなども考慮する必要があるのかも知れませんね。

そんな中で、茨城の大洗をベースにサーフスクールを運営しているウエッジの小野瀬さんの意見を伺いながら、初級者が早く上手くなるためにはどのようなボードで練習するのがベストなのかを考えてみました。
小野瀬さんはスクールに入った生徒が、自分の手をはなれ、ひとりで上達して行けるレベルにまでにすることがインストラクターの仕事だと言っています。
スクールは体験レッスンと違うので、ボードを押してもらって、ただ波に乗れれば良いというのではありません。
自分の力で沖に出て、入って来る波を自分の目で判断し、ボードを岸に向けてパドルをスタートさせ、自分ひとりで波に乗れるようになることを目指します。
そして、最終的には右と左の基本的なターンをマスターするところまで教えます。

これら一連の動作をすべて身に付けるためには適正なボードの存在がとても重要なのだと説明してくれました。
小野瀬さんは、長さと浮力が十分にありながらも取り回しが楽で、波に乗ってからコントロールし易いボードの必要性を説いています。

一般のサーフスクールでは、大きくて安定したスポンジ製のロングボードなどを使用していますが、ほとんどの初級者は、波を発見してから到達するまでの短い時間内に、その大きくて重いボードの向きを変えることができません。
そのため最初からノーズを岸に向け、沖に背中を向けて波を待ち、インストラクターの掛け声を合図にパドルをスタートします。
これだと自分で波を見ていないので、いつまでたっても波に乗るタイミングがつかめません。
また、大きすぎるボードでは十分なパドル力も身につきません。
サーフィンの上達のためには、スクールのわりと早い段階で自分のスキルアップにつながるボードを使って練習することが、特に重要だと言っています。20140412112340-thumb-640x480-29魔法のボード
小野瀬さんのスクールで使っているサーフボードは7’6”クラスのミディアムサイズのもので「魔法のボード」と呼ばれています。
10年以上前、初級者のためのボードとしてオーストラリアで特別にデザインされたものです。
幅はさほど広くなく、見た目はごく普通のボードにしか見えません。
ロッカーは弱めですが、ターン性能を考慮して全体的にナチュラルなカーブでしっかりとつながっています。
なぜ「魔法」なのかというと、このボードは乗るのが非常に簡単で、生徒が勝手にすぐ上手くなってしまうのだそうです。(教えるのが上手いからだと言わないところが小野瀬さんらしいですが……)

小野瀬さんは、このボードさえあれば、あとは波に乗るタイミングを覚えることと、乗るために必要なパドル力を身に付けること、この2つだけだと言い切ります。
彼のスクールの大半はこのボードの乗り方を教えます。
生徒は自分で沖に出て、波を選び、自分の力でテイクオフします。

このボードはゆっくり傾ければ自然に曲がるようにできているので、波に乗るための練習をしているうちに楽しみながら勝手に十分なパドル力とターンに必要なバランスを身に付けてしまうそうです。
たったこれだけ?
と思うかも知れませんが、この一連の動作の中には初級者に必要なすべてのスキルが含まれているのだそうです。
彼はそのレベルや場面に
応じたアドバイスを加えているだけです。

このボードでサーフィンの基本をマスターすれば、自分でスピードを付けることのできないショートボーダーや、ターンのできないロングボーダーは居なくなるだろうと、小野瀬さんは言っています。

 

OGMエントリーボード
OGMでは小野瀬氏がレッスンで使用しているボードを参考に、初級者が自分の力でレベルアップしていけるためのベストな入門ボードを考えてみました。
このボードは最新のマシンシェイプで制作することにより大幅にコストを削減しています。
通常のハンドシェイプでこの大きさのボードを作ると価格が15万円を超えてしまいます。
まだ自分の乗り方の定まっていない初級者にハンドシェイプで行っている個別の調整は不要だと判断しました。
モデルごとの安定した性能を引き出しやすいマシンシェイプを活用し、長さ、幅、厚さなどのオーダーに対応しています。

OGM ENTRY のコンセプトはこちら
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上達するサーフボード(中級者編)

4マンプライオリティー(その3)

4マンプライオリティー(その3)

今回はプライオリティー(優先権)を手に入れる方法について説明します。
波に乗ることによって優先権を使ってしまうと、その選手の持っていたプライオリティーは無くなってしまいます。
次に新しくプライオリティーを手に入れるためには沖のラインアップに戻らなくてはなりません。
正確には「ラインアップ」では無く、ルールブック上では「プライマリーテイクオフゾーン」と書かれています。
これは、最初に波に乗る(乗った)エリアのことです。
たとえば、選手が波に乗ってエリアの端の方まで行き、その位置からそのまま、まっすぐ沖に出たとしてもそのポジションはプライマリーテイクオフゾーンからはずれているので優先権は与えられません。
プライオリティーを得るためには、しっかりと乗り始めの位置に戻ることが必要です。

もう一つ、選手たちが優先権を手に入れるため、パドルバックを競い合う姿を見たことがあるかと思います。
これはプライマリーテイクオフゾーンに戻った順番で高い優先権が得られるからです。
どちらが先に沖のエリアに戻ったのかを判断しているのは岸にいるプライオリティージャッジですが、ほとんど同時でどちらが先だったのか判別しにくい時があります。
この場合、ルールブックでは最後にプライオリティーを持っていなかった方の選手に高い優先権を与えることになっています。

4マンプライオリティー (その2)

前回の4マンプライオリティーの記事に関して何件かの質問があったので、システムについて少し解説します。
ただし、これはあくまでも観客レベルでの説明で、試合に出場する選手やコーチには不十分です。
ルールブックを読むといろいろなシチュエーションに対して細かく載っていますので、選手は必ずそちらを参照してくださいね。

 

プライオリティールール
通常のサーフィンの試合では波の奥側を確保した選手にその波に乗る権利が与えられていますが、これに対して選手のポジションに関係なく順番に波に乗る優先権を与えようというのがこのプライオリティールールです。
このルールが適用されることで選手どうしの波の取り合いがなくなり、優先権を手に入れた選手は、自分の好きな波を、好きな場所からテイクオフできることになります。

今までプライオリティールールはマンオンマンヒートでのみ使われていたのですが、最近のWSLの試合では4マンヒートでも採用されることが多くなっています。
来週から千葉県一宮で行われるWSL Ichinomiya Chiba Openでもこの4マンプライオリティーシステムが使われますので、ちょっとだけアタマに入れておいて頂けると楽しく観戦できると思います。

 

4マンプライオリティーシステム
このシステムは各ヒートスタート直後、4名の選手の優先順位が確定する間の部分に少しだけわかりにくいところがあります。
今回はそのあたりを中心に説明したいと思います。

  1. ヒートスタート時
    沖のテイクオフゾーンに4名の選手がそろった時点でヒートがスタートします。
    まだ誰もプライオリティーを持っていないので、通常の4マンヒートと同じように選手は自由にパドルすることができます。
    この時点でプライオリティーパネルは次のようになっています。スタート
  2. 最初にレッドの選手が波をつかまえ、ライディングをしたとします
    レッドに4thプライオリティーが与えられ、パネルはこのように変わります。(実際にはレッドがライディング後、沖のテイクオフゾーンへ戻った段階でプライオリティーが与えられます)
    ホワイト、イエロー、ブルーの各選手は互いに優先関係はありませんが、この3選手はレッドに対してだけ優先権を持っていて、この段階ではその優先権を失うことなく自由にパドルすることができます。
  3. 赤次にホワイトの選手がテイクオフしたとします
    ホワイトがライディングしたので、ホワイトの選手に4番目の優先権が与えられ、そしてレッドの優先権は一つ上がり3rdプライオリティーに変わります。
    レッドはホワイトに対してだけ優先権を持っていますが、もしレッドがパドルして波に乗り損なうとホワイトと優先権が入れ変わり、4番目に落ちてしまうことになります。
    この段階でもイエロー、ブルーの2選手は波をつかまえるため自由にパドルすることができます。
    そして2選手間では優先関係はありませんが、レッドとホワイトに対しては優先権を持っています。
  4. 赤白3番目にイエローの選手がテイクオフしたとします
    3番目の選手が波に乗った時点で、最後まで沖に残ったブルーの選手が自動的に1stプライオリティーを得ることになります。
    パネルが次のように変わり、ここから正式な4マンプライオリティーがスタートします。

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4マンプライオリティーの基本ルール

  • 1stプライオリティーを持った選手は他のすべての選手に対して優先権を持ちます
  • 2ndプライオリティーを持った選手は3rd、4thプライオリティーの選手に対して優先権を持ちます
  • 3rdプライオリティーを持った選手は4thプライオリティーの選手にだけ優先権を持ちます
  • すべての選手は波に乗るためにパドルをしたり、テイクオフした時点で優先権が無くなります
  • プライオリティーを無くした選手は、沖のテイクオフゾーンに戻った時点で4thプライオリティーを手に入れることができます

 

 

4マンプライオリティー

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2016年バリ島クラマスで行われたJPSAショートボード第1戦で、日本のサーフィン史上初となる4マンプライオリティーが導入された。

通常の4マンヒートでは、波の奥側にいる選手がその波に乗る権利を得るというルールのため、選手は相手にプレッシャーを与えながら奥のポジションをキープしようとする。
そのため選手同士が波を取り合って接触したり、2人の選手がインサイドポジションを競い合って波の奥に入り過ぎ、2人ともその波を逃してしまったりすることが少なくなかった。

この新しく導入された4マンプライオリティーというシステムは、波に乗る優先権を選手に順番に与えるというルールがベースとなっている。
このシステムでは、波のブレイクの形や選手のポジションとは関係なく、沖のテイクオフゾーンに到達した順番によって優先権が与えられ、権利を持った選手は好きな波に自分の思っている最適なポジションからテイクオフし演技することができる。

このことは試合から事実上、波の取り合いが無くなることを意味する。
プライオリティーシステムでは、沖に波が入ってくる以前から優先権が確定していて、その権利の順番がカラーパネルによってハッキリと表示されている。
実際に今回のコンテストでは選手同士の余計なハッスリングはほとんど無くなり、試合はかなり紳士的なものとなった。
波の取り合いもゲームとして面白いという意見の方もいるのかも知れないが、フィギュアスケートや体操競技などと同じようにサーフィンも純粋に演技だけを評価する時代が来ているのではないだろうか。

また、見ている人たちにとって、このシステムはわかりやすくとてもすっきりしたものに映るはずだ。
インターフェアなどの状況が起こったとき、その時点での優先権を判断するのは専門家でも難しい。
スコアーポテンシャルがレフトにあるからこちらの選手に優先権があるだとか、この時はマルチピークシチュエーションだから先に立ち上がった選手に優先権がある、などといった複雑なルールの説明を一般の人が聞いてもなかなか理解するのは難しいと思われる。

オリンピックに向けて、一般の人にわかりやすいというのはこれから非常に重要な要素になってくるだろう。

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4マンプライオリティールール
ルールについてはルールブックに書かれていることがすべてなので、ここで誤解が起こることのないように下手な解釈や解説をすることは避けたい。
しかしながら、プライオリティーがどのように決められているかというルールを選手自身が理解しないで、カラーパネルの指示通りに波に乗れば良いなどと考えているのだとしたらその選手はとうてい勝ち上がることはできないだろう。

プライオリティーが確定し、パネルが完全に入れ替わった状態で1本の波が入って来るような落ち着いた状況であれば何も問題は無い。
選手はカラーパネルで示された順番に従って波に乗ればよい。
しかし、実際の海では波は必ず何本かまとめて入ってくる。
誰かがパドルしたり波に乗ったりすればプライオリティーは目まぐるしく入れ替わる。
つまりセット2本目の波の優先権はすでにそのカラーの順番にはなっていないということだ。
ここで入れ替わるのはファーストプライオリティーだけではない。
セカンドプライオリティーやサードプライオリティー、あるいは4番目のプライオリティーまで含め、選手がパドルするだけで、いろいろな場所で入れ変わりが起こってくる。
カラーパネルにはタイムラグがあり、アナウンスも状況によっては追いつかないこともあるだろう。
加えてオンショアーが強ければ聞き取ることも難しい。

自分が何番目のプライオリティーを持っていて、あの波に2人の選手がパドルしたのだから、この次の波に対して自分が何番目のプライオリティーになっているのかなどは自分自身でしっかりと把握できている必要があるだろう。
パネルが変わるのを待っていたのでは波は行ってしまう。
優先権を持っているのに乗らなければ、他のサーファーが乗ってしまうだろう。
権利を持っていないのに波に乗って、他の選手の邪魔をすればインターフェアを取られてしまう。
しかもプライオリティーインターフェアのペナルティーはハーフカットではなく、ワンウエイブイブカットなのでまず勝ち目は無くなる。

4マンプライオリティールールの中には専門的な用語や複雑でわかりにくい部分も含まれているが、良い波を手に入れるためには、選手にとってこれから最も重要なルールになってくることはまず間違いない。

4マンプライオリティーはWSLのQS下位グレードの試合でもすでに導入が始まり、世界的にはサーフコンテストの標準的なシステムになりつつある。
JPSAでも今後、採用される試合数がどんどん増えていくと思われる。
おそらくアマチュアの試合も例外とはならないだろう。

選手はルールブックをしっかり読んで理解し、今後の試合にぜひ役立てて欲しい。

 

追記

今回のクラマスの試合で、残念なインターフェアが1つあった。
ヒート終了間際で負けている選手が明らかにわざと優先権を持つ選手に対してドロップインしたことだ。
マンオンマンヒートでは稀に見られる行為だが、これは自分が負けることと相手が勝つということが同じだからだ。
マンオンマンだったら良いというわけではないが、選手の気持ちを考えるとまだ理解できないわけではない。
これに対し、4マンヒートでは、選手はこれを絶対にすべきでないと考える。
4マンヒートでは、自分が負けるということと相手が勝つということは同義ではない。
ドロップされた選手にとって、その波をメイクできるかできないかは非常に大きな違いがある。
その波をメイクできればまだ勝ち上がるチャンスが残されているからだ。
すでに勝ち上がるチャンスのなくなったプライオリティーシチュエーションで、自分がインターフェアで負けるのならまだしも、他の選手が逆転できる可能性も一緒に奪ってしまうのは最低の行為だと考える。
マナー的にも安全面からも絶対にやめてもらいたい。

 

 

 

新しい時代のシェイパー

10429443_756434197784753_1048103761177719933_nすぐれたシェイパーは、すぐれたサーファーか?

すぐれたシェイパーであるためには、すぐれたサーファーであることが絶対的に必要な条件であると言われています。
その理由はサーフボードに働く力が、基本的には流体力学やアルキメデスの原理に基づいているものの、波という三次元的にゆがんだ曲面上をボードが滑走しているため、非常に複雑で解析しにくいからです。
このことから、サーフボードには理論的なデザインよりも、むしろ体感的な経験に基づいたデザインがとても重要なものとなっています。
シェイパーによって新しく削り出されたサーフボードは、サーファーが本当の波に乗って初めてその性能を評価できます。
そしてシェイパーには、ボードデザインを変化させたとき、ボードの特性がどのように変わるのかを誰よりも詳しく体感的に判断できる能力が必要です。
シェイパーは頭だけではなく、自分の体でボードデザインを理解できなくてはなりません。
このことがすぐれたシェイパーはすぐれたサーファーであると言われているゆえんです。

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反対に、すぐれたサーファーはすぐれたシェイパーでしょうか?

今までの答えはNOでした。
シェイパーには、まず頭の中にあるデザインをプレーナーやノコギリといった道具を使って現実に作り出す能力が必要です。
サーフボードは複雑な三次曲面で形成されていて、これをきれいに削り上げることはとても難しい作業でした。
性能はともかく見た目だけでもまともなサーフボードを作るためには最低でも1000本程度のボードをシェイプしないと難しいのではないでしょうか。
しかしながら、近年、すぐれたシェイプマシンと扱いやすいソフトウエアの開発によってこの問題は消滅しました。
現在では一部のすぐれたサーファーが素晴しいサーフボードをシェイプしています。

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サーフボードシェイプは確実に新しい時代に入ったと言えます。

これはハンドシェイプとかマシンシェイプとかいった削り方の違いのことではありません。
のこぎりやカンナを上手く使いボードをきれいに仕上げるという、いわゆる職人的だった技術とシェイプとが分離されたことで、サーフボードは純粋にその性能で評価される時代となって来ています。
シェイプマシンだって単なる道具に過ぎません。
ボードデザインを変化させたとき、ボードの性能がどのように変化するのかを理論的に、体感的に、直感的に予測し、理解し、分析できる想像力が重要です。

ボードの美しさはもちろん重要な要素だと思いますが、それ以上に重要なのがその性能です。
サーフボードを走らせているのは、まぎれもなく物理学です。
見た目だけの美しさだけでなく数学的にも力学的にも美しく性能の高いサーフボードを削るのがシェイパーの仕事です。

これからのシェイパーは、デザイナーやエンジニアとしての能力が今まで以上に重要になってくるものと思われます。

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スコアーのしくみ(その5)

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ジャッジの仕事は「上手いサーフィンにより高いポイントを与える」ことです。
これは世界最高峰のWCTでも、ローカルコンテストでも変わりません。
では、その上手さとは何を基準に判断しているのでしょうか?

ルールブックの中にはジャッジが何について判断し、どのようにスコアーを決定すべきなのかを明確に書いた「ジャッジ基準」というものが存在します。

ジャッジ基準は選手とジャッジとの間で交わされた採点に関する取り決めで、ジャッジはこの基準に一番近いサーフィンをした選手に一番高い得点を与えなくてはなりません。
最近の基準はリッピングの回数やカットバックを何回したとか、ライディングの距離や時間などといった誰にでも解るようなものではなく、マニューバー自体の難易度や完成度を評価する高度なレベルのものに変わってきています。
ジャッジには、単に事務的な能力だけでなく、サーフィンをより深いレベルまで理解し、ジャッジ基準をしっかり把握した上での採点が求められています。

ジャッジ基準
これが世界中で行われるほとんどの試合でベースとなっている「WSLジャッジ基準」の最新版です。
プロもアマチュアクラスもビギナークラスでもすべて同じものが使われています。

2016 WSL Judging Criteria
Surfers must perform to the WSL judging key elements to maximize their scoring potential.
Judges analyze the following major elements when scoring a Ride:

  •  Commitment and degree of difficulty(コミットメントと難易度)
  •  Innovative and progressive manoeuvres(革新的で進歩的なマニューバー)
  •  Combination of major manoeuvres(メジャーマニューバーの組み合わせ)
  •  Variety of manoeuvres(マニューバーの多様性)
  •  Speed, power and flow(スピード、パワー、フロー)

NOTE: It’s important to note that the emphasis of certain elements is contingent upon the location and the conditions on the day, as well as changes of conditions during the day.
NOTE: The following scale may be used to describe a Ride that is scored:
0–1.9 = Poor;  2.0–3.9 = Fair;  4.0–5.9 = Average;  6.0–7.9 = Good;  8.0–10.0 = Excellent

ジャッジ基準には独特の用語が使われています。
ツアージャッジ達が実際のジャッジルームの中で使っているニュアンスをもとに、解釈のポイントを説明しますので、ぜひこの基準を自分のものにしてください。

コミットメント(積極性)
ジャッジの間では、高いリスクを払っているかどうかを見極める重要な言葉として、しばしば登場します。
波の最もきびしいセクションに果敢にアタックするマニューバーには特に高いスコアーを与えています。
また、1つのライディングの中で、いつ、そのマニューバーを行ったのかも得点に影響します。
難しいマニューバーをライディングの最初に入れる方が最後に入れるよりリスクの高いのは明らかで、ジャッジがファーストマニューバーを重視するのはこのためです。

難易度
ジャッジはマニューバーの難しさに得点を与えます。
マニューバーの回数やライディングの長さではなく、技術のレベルをスコアーで表現します。
マニューバーの量ではなく、質が重要です。

革新的で進歩的なマニューバー
今までに見たこともない新しいマニューバーや、現在のマニューバーをさらに進化させたものに挑戦してほしいという願いを込め、高い評価をしています。

メジャーマニューバーの組み合わせ
マニューバーを組み合わせること、そのつながり、連続させることの難しさを評価に加えています。

マニューバーの多様性
サーファーが同じマニューバーを何回も繰り返す単調なものではなく、ジャッジは1つのライディングの中に多種類のマニューバーを要求しています。

スピード、パワー、フロー
スピードとパワーについては、トラックの深さ、レールの寝かせ方、スプレーの大きさなどから判断できるはずです。
すべてのマニューバーの判断の基本となる部分です。
フローは、マニューバーのつながりと共に、クリティカルなセクションの使い方や、波を読んだ的確なマニューバーの組み立て方なども評価の対象としています。

NOTE:
そして最後に注意として、ジャッジ基準の中のどれを重視するかは、その試合の行われているロケーションや、その日のコンディションによって変化すると書かれています。

たとえばトラッセルズのようなポイントでは、革新的で進歩的なマニューバーやその多様性が大きく評価されています。
それに対してパイプラインなどのきびしい波では、エアリアルなどではなく、チューブの深さやテイクオフのポジションなどをコミットメント(積極性)や難易度を使って高く評価します。
また通常の試合では、波の大きさの違いをあまり評価に加えていませんが、ワイメアのような特別に大きな波での試合の場合は、波のサイズが重要な要素となります。
巨大な波にテイクオフするサーファーというのは、最大級のコミットメント(積極性)を示すこととしてジャッジは高く評価しています。

 

スコアーのしくみ(その4)

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下駄を履かせてはいけません。
採点で10点満点をフルスケールで使うということは、良くないサーフィンにも高い点を与え、スコアー全体を引き上げると言う意味ではありません。
良いサーフィンにはより高く、良くないサーフィンにはハッキリとした低い点数をつけ、スコアーにメリハリをつけると言う意味です。

ふつうのマニューバを何回も繰り返したライディングに高い点数がつき、グッドスコアーになってしまうことがあります。
また、レールのあまり使われていないマニューバが繰り返されているのに、アベレージスコアーを使ってしまうこともあります。
ジャッジはマニューバの回数やライディングの長さにまどわされてはいけません。

良いマニューバが入ったライディングがグッドスコアー、
エクセレントなマニューバが入ったライディングがエクセレントスコアー、
ふつうのマニューバだったら、アベレージスコアーを使います。

同じグレードのマニューバが何回連続で繰り返されたとしても、その採点スケールの範囲の中で評価を考えます。
決してその採点のカテゴリーを飛び越えた上のスコアーを使わないようにします。
これを守るだけでスコアーが非常にスッキリとしたものとなります。

レールの入っていないプアーなマニューバを何回繰り返してもプアースコアーにしかなりません。

これが前回話した、
「すごいマニューバ1回するのと、ふつうのマニューバ3回するのとでは、どっちの点が高いの?」
の明確な答えです。

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ジャイアント馬場の16文キックはエクセレントスコアーですが、グレート東郷の塩まき目つぶしや、ミスター珍の下駄攻撃はプアースコアーでお願いします。

もし自分のスコアーが伸びないなと思ったら、そのマニューバがあまり評価されていないということです。
ジャッジはマニューバの難易度に点数をつけています。

ジャッジ基準を読み返してください。
そこには高いスコアーを得るための答えが書いてあります。

  • スピード、パワーは十分ですか?
  • マニューバのつながりはどうですか?
  • レールはしっかり使われていますか?
  • コミットメントはありますか?
  • マニューバのポジションはどうですか?
    波のクリティカルな場所を逃げていませんか?
  • その技は革新的で進歩的ですか?
  • マニューバの種類は豊富でしたか?
  • コントロールはどうですか?
    バランスはくずれていませんでしたか?
  • そのセクションで行ったマニューバは最適でしたか?
    もっとぴったりの良いマニューバはありませんでしたか?

ケリースレーターだって同じ基準で採点されています。
ジャッジはジャッジ基準に従って採点します。

スコアーのしくみ(その3)

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ジャッジをしていると、選手からこんな質問を受けます。
「すごいマニューバ1回するのと、ふつうのマニューバ3回するのとでは、どっちの点が高いの?」
ジャッジ基準には、マニューバの量ではなく、質(クオリティー)に点数をつけるとはっきり書かれています。
したがって、むずかしいマニューバの入っているライディングに高いスコアーが付くことになります。

ジャッジは、採点スケールにしたがってスコアーを決定します。
採点スケールとは、ジャッジシートの隅に書かれているグッドとかエクセレントとか書かれているコレのことです。

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ライディングのマニューバを分析し、
良いライディングだなと思ったらグッドスコアーの中から、
ふつうのライディングだなと思ったらアベレージスコアーの中から、
その採点スケールの範囲の中で最適なスコアーを決定します。

ジャッジは点数にはっきりとした差をつけるため、2点や3点の低い点数で勝敗を決めるのではなく、なるべく10点満点のスケールをいっぱいに使って採点するように教育を受けています。
この採点スケールは、スコアーに幅を持たせるためにも非常に有効です。

たとえば、あるライディングに対し、ジャッジが5点をつけたとします。
ヘッドジャッジがたずねます。
「今のライディング、どうだった?」
そのジャッジは、
「良かったよ。」
と答えたとします。
すると、ヘッドジャッジは、
「良かったと思うのだったら5点じゃなくて、採点スケールのGood (6.0~7.9)の中でスコアーすればもっと幅広く10点満点を使えるよ。」
とアドバイスするでしょう。

ジャッジが10点満点のスケールを幅広く使うことによって実力のある選手が勝ち上がる確立が高くなります。
プロの試合でグッドライド(6.0~7.9)のスコアーを出すことは容易ではありません。
おそらく1本のライディングの中に、難易度の高いマニューバを最低1~2回ほど組み入れる必要があるでしょう。
これは、実力のあるサーファーでないと出せないスコアーです。
それに対して、3ポイント程度のスコアーは1本のライディングの中に簡単なマニューバを1回入れれば出せてしまいます。

何らかの事情で、その上手いサーファーがヒート時間内に、うまく波にめぐりあわず良いライディング1回しか乗れなかった場合、もしそのスコアーに5点しかついていなかったとすると、簡単なマニューバが1回しか入っていない3点ライディングを2本乗った選手に合計で負けてしまうのです。
もしエクセレントなサーフィンにジャッジが7点しか出すことができなければ、アベレージな4点のライディングを2本乗った選手に負けてしまうのです。

このように、評価を誤ると試合結果が違ったものになってしまいます。
われわれジャッジは、ライディングに含まれるきびしいマニューバを正しく評価し、素晴らしいサーフィンを行った選手がしっかりと勝ち上がって行けるジャッジングをめざしたいものです。