― 左膝のチップの話 ―
もう40年も前の話です。
私は一度、円盤に乗せられる夢を見たことがあります。
その時、私は建物の5階の窓のそばで寝ていました。
ふと気づくと、窓の外に円盤が迎えに来ています。
普通なら、そこから外に出たら大変な高さです。
でも夢の中の私は、まったく迷いません。
「はいはい、来ましたか」
という感じで、そのまま窓の外へ一歩。
すると円盤の下から青い光が出て、
私は落ちることなく、そのままスーッと吸い上げられていきます。
ここまでは、まあ予想の範囲内。
(夢の中の自分の感覚です)
問題はその後でした。
円盤の中で、銀色のベッドのような台に寝かされ、
宇宙人らしき存在が注射を打とうとしてきます。
ここで私は初めて抵抗しました。
私は注射が大嫌いなんです。
「ちょっと待ってくれ。
そんな話は聞いてない。」
……と思ったところで目が覚めました。
翌日、その話を友人にすると、
彼が妙なことを聞いてきます。
「小川さん、左の膝、調子悪くないですか?」
私は言いました。
「いや、悪いのは右膝だよ。
サーフィンの時、サポーターを巻いているのは右だし。」
そう言って右膝を触ろうとした瞬間、
私は気づきました。
あれ?
調子が悪いの、
右じゃなくて左膝だ……。
すると友人は、本を一冊貸してくれました。
宇宙人に拐われた人の体験談の本です。
そこにはこう書いてありました。
「拐われた人は、左膝にマイクロチップを埋め込まれる」
そして膝の調子が悪くなる、と。
それ以来、友人は私のことを
「宇宙人に拐われたことのある人」
だと言っています。
私もたまに、初対面の人にこう言います。
「実は昔、円盤に乗せられたことがあってね。
その時、左膝にチップを埋め込まれてから調子が悪いんです。」
だいたい相手は、
一歩引きます。
でも私は、時々思うんです。
もし黒船が日本に来たように、
宇宙人が地球に来てくれたら。
その時、人類は
国とか争いとかをやめて、
「地球」という一つのチームになれるんじゃないか。
そんなことを考えることがあります。
まあ、とりあえず私は、
左膝のチップの電波が届く範囲で、
今日も普通に生活しています。











