投稿者「ogama」のアーカイブ

波と語らうスピードのデザイン

SURF“RACING”EVOLUTION

サーフィンにおけるサーファーとボードシェイパーの関係は、カーレースにおけるドライバーとエンジニアのそれに近いといわれる。レースのごとく進化を続けてきたサーフィンの魅力に迫るべく、マクラーレンGT で2人のキーパーソンを訪ねた。https://firstdrive.jp/post-283

 

上達するサーフボード(上級者編)

「 ボトムターン、オフザリップ、カットバック、フローター………ひと通りすべてのマニューバーをこなせるようになり、やっていることはほとんど一緒なのに、なぜか上手なサーファーとちょっと違う 」

中級者以上になると、こんな悩みを持つサーファーが多くなります。
これはマニューバーとマニューバーのつながりの問題もありますが、ほとんどは一つ一つのマニューバーのクォリティの違いによるものです。
もしあなたがコンペティターならば、今までのボードよりもさらに1ランク上のレベルで、自分に合ったサーフボードを手に入れる必要があります。

現在の試合の採点方法では、ジャッジは1つ1つのマニューバーに最大のパワーと正確なコントロールを求めています。
上級者は最大の速度の状態から何の迷いもなくレールを寝かせ、ターンに入っていきます。
そして、スピードとパワー、コントロールされたマニューバーがジャッジを魅了します。
手加減やごまかしではスコアになりません。

サーフボードを制御する方法は一つしかありません。
サーファーは重心の微妙な移動だけでボードをコントロールしています。
サーフボードに安心して最大のパワーを加えることができるためには、選手とボードの間に100%の信頼関係が必要です。
ロッカーの大きさ、アウトラインのバランス、レールの形状、コンケーブの配置、ボードの重量など、サーフボードは選手の体型や乗り方に合っていなくてはなりません。

ぴったり合ったサーフボードを手に入れるために、シェイパーはライダーの言葉を聞き、ライディングを分析し、微調整を繰り返しながら一歩一歩ベストなボードに近づけます。
ロッカーの大きさやテールの広さ、レール形状などのほんのちょっとした変更で乗り味を調整し、信頼できるボードを完成させます。
これはハンドシェイプもマシンシェイプも同じです。
通常のモデルの中だけで(自分のために開発されたモデルなら別ですが)、長さ、幅、厚さをただ当てずっぽうにオーダーしていても、自分のマジックボードに出会う可能性はほとんどありません。
上級者にはモデルの範囲を越えた調整が必要です。

言葉でサーフボードの感触をシェイパーに説明することはなかなか難しい作業ですが、お店の方やシェイパーとコミュニケーションを取り、十分な時間をかけて、自分にぴったりの上達するサーフボードを手に入れてください。

 

上達するサーフボード(初級者編)

上達するサーフボード(中級者編)

上達するサーフボード(中級者編)

安定して波をつかまえることができるようになると、次はいよいよマニューバーの出番です。
サーフィンのマニューバーには、ボトムターン、トップターン、オフザリップ、フローター、カットバックなど多くの種類がありますが、実はほとんどのマニューバーは左右のターンの組み合わせだけで成り立っています。
つまり、フロントサイドのターンとバックサイドのターンの2つを完全にマスターすれば、ほとんどのマニューバーをメイクすることができるのです。
ターンはシンプルですが非常に繊細であり、上手なサーファーのターンはレールの入り方がスムーズで力強く、とても美しいものです。

 

中級レベルのサーファーが上達するためには、ターンの習得しやすいサーフボードを選ぶことが大切です。
ターンしやすいボードとは、動きの軽さを意味するわけではありません。
同様に、動きにくいボードを指すわけでもありません。
レールの使い方が安定するまでは、ターンのきっかけをつかみやすくするため、レールがあまり厚くなりすぎないボードを選ぶことが大切です。
適度な浮力を持ち、失速しにくく、スピードが安定するボードが最適です。

早いテイクオフを求めて、ノーズやテールを広くしすぎたり、ロッカーが弱すぎるボードを選んでしまうと、ターンのコントロールが難しくなってしまいますので注意が必要です。
サーフボードにはアウトラインやロッカー、ワイデストポイントの位置、ノーズやテールの広さ、ボリュームのバランスなど、多くの重要なスペックが存在します。
ボリュームの数値も大切な要素ですが、同じボリュームでも乗り味の異なるボードは無限に存在します。
マシンシェイプの普及により、最近ではサーフボードのボリューム表示が増えていますが、
「長さを短くした分幅を広げてボリュームを同じにしたから大丈夫!」
などと一言で言えるほど単純なものではありません。

抽象的な言葉ですが、極端なデザインを避け、全体がきれいなカーブでまとまったスムーズなボードが理想的です。
ロッカーもノーズやテールで極端に変化しているものではなく、ナチュラルなタイプが望ましいでしょう。

上達への近道は、信頼できるお店や、あなたのサーフィンをよく知る人の意見を聞き、自分にぴったりのサーフボードを手に入れることです。
自分に合っていないサーフボードでいくら練習しても、サーフィンは上手になりません。

 

ーーー コラム ーーーーーーーーーーーーーーー

浮力と揚力の違い

初級者がサーフボードを選ぶ際に重要な要素は、ボードの長さと浮力でした。
沖へ向かうためのゲティングアウトや波をつかまえるためのテイクオフでは、サーフボードの速度が比較的遅く、揚力はほとんど発生しません。
その段階では、ボードの体積による浮力がサーフィンを制御する要素でした。

中級者が上達するためには、自分に合った次のレベルのサーフボードを手に入れる必要があります。
テイクオフし、ボードにスピードがついてくると、サーフボードには揚力が発生します。
揚力は、主にボトムの接水面から上向きの力として発生し、非常に大きな力です。
たとえば、体積が25リットルのサーフボードの浮力は25kgしかありません。
もしサーファーの体重が65kgであれば、ライディング中には浮力を差し引いた残りの40kgを支えるのは、ボードが走ることによって生まれる揚力となります。(実際にはサーフボードは完全に水中に沈んでいないため、揚力の占める割合はさらに大きな数値となります)

揚力は浮力とは異なり、非常に扱いづらく、ボードの速度が変わると揚力の大きさも変化してしまいます。
実際には速度の2乗に比例して揚力が増加するため、ある速度で安定して走っていたサーフボードが、波の大きな時やセクションを抜ける時などでボードの速度が2倍になると揚力は4倍になってしまいます。
体重は変化しないので、この時、あなたの体を支えるために使われるボードの接水面積は4分の1になっていることになります。
この接水面積の減少が、サーフィンの不安定さを引き起こすことがあります。
例えば、小波用のテールが広すぎるボードで大きな波に乗った場合、ノーズが浮き上がってボトムターンができなくなる経験を持つサーファーは少なくないと思いますが、これがその現象です。

ターンの安定しない中級者にとっては、ボードの速度変化がコントロールに影響を与えにくいサーフボードを選ぶことが重要です。

 

上達するサーフボード(初級者編)

 

 

 

 

 

 

上達するサーフボード(初級者編)

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サーフィンを始めたばかりの初級者が早く上達するサーフボードとはどんなものなのでしょうか?
これには、「絶対にロングボード」だという人もいれば、「少し短めで十分な浮力を持ったボード」だという人もいます。
いろいろと意見が別れますが、波のコンディションや体重、年齢やサーフィンの頻度なども考えてボードを選ぶ必要があるのかも知れませんね。

そんな中で、茨城の大洗をベースにサーフスクールを運営しているウエッジ サーフショップの小野瀬さんの意見を伺いながら、初級者が早く上手くなるためにはどのようなボードで練習するのがベストなのかを考えてみました。
小野瀬さんはスクールに入った生徒が、自分の手をはなれ、ひとりで上達して行けるレベルにまでにすることがインストラクターの仕事だと言っています。
スクールは体験レッスンとは違うので、ボードを押してもらって、ただ波に乗れれば良いというのではありません。
自分の力で沖に出て、入って来る波を自分の目で判断し、ボードを岸に向けてパドルをスタートさせ、自分ひとりで波に乗れるようになることを目指しているそうです。
そして、最終的には右と左の基本的なターンをマスターするところまで教えています。

これらの一連の動作をすべて身に付けるためには適正なボードの存在がとても重要なのだと説明してくれました。
小野瀬さんは、長さと浮力が十分にありながらも取り回しが楽で、波に乗ってからコントロールし易いボードの必要性を説いています。

一般のサーフスクールでは、大きくて安定したスポンジ製のロングボードなどを使用していますが、ほとんどの初級者は、波を発見してから自分のところへ到達するまでの短い時間内に、その大きくて重いボードの向きを変えることができません。
そのため最初からノーズを岸に向け、沖に背中を向けて波を待ち、インストラクターの掛け声を合図にパドルをスタートします。
これだと自分で波を見ていないので、いつまでたっても波に乗るタイミングがつかめません。
また、大きすぎるボードでは十分なパドル力も身につきません。
サーフィンの上達のためには、スクールのわりと早い段階で自分のスキルアップにつながるボードを使って練習することが、特に重要だと言っています。
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魔法のボード
小野瀬さんのスクールで使っているサーフボードは7’6”クラスのミディアムサイズのもので「魔法のボード」と呼ばれています。
10年以上前、初級者のためのボードとしてオーストラリアで特別にデザインされたものだそうです。
幅はさほど広くなく、見た目はごく普通のボードにしか見えません。
ロッカーは弱めですが、ターン性能を考慮して全体的にナチュラルなカーブでしっかりとつながっています。
なぜ「魔法」なのかというと、このボードは乗るのが非常に簡単なので、生徒が勝手にうまくなってしまうのだそうです。(教えるのが上手いからだと言わないところが小野瀬さんらしいですが……)

小野瀬さんは、このボードさえあれば、あとは波に乗るタイミングを覚えることと、乗るために必要なパドル力を身に付けること、この2つだけだと言い切ります。
彼のスクールの大半はこのボードの扱い方だけを教えます。
生徒は自分で沖に出て、波を選び、自分の力でテイクオフします。

このボードはゆっくり傾ければ自然に曲がるようにできているので、波に乗るための練習をしているうちに楽しみながら勝手に十分なパドル力とターンに必要なバランスを身に付けてしまうそうです。

たったこれだけ?
と思うかも知れませんが、この一連の動作の中には初級者に必要なすべてのスキルが含まれているのだそうです。

このボードでサーフィンの基本をマスターすれば、自分でスピードを付けることのできないショートボーダーや、ターンのできないロングボーダーは居なくなるだろうと、小野瀬さんは言っています。

 

OGMエントリーボード
OGMでは小野瀬氏がレッスンで使用しているボードを参考に、初級者が自分の力でレベルアップしていけるためのベストな入門ボードを考えてみました。
このボードは最新のマシンシェイプで制作することにより大幅にコストを削減しています。
通常のハンドシェイプでこの大きさのボードを作ると価格が15万円を超えてしまいます。
まだ自分の乗り方の定まっていない初級者にハンドシェイプで行っている個別の調整は不要だと判断しました。
モデルごとの安定した性能を引き出しやすいマシンシェイプを活用し、長さ、幅、厚さなどのオーダーに対応しています。

OGM ENTRY の詳細はこちら
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レールサーフィン

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短くて幅広く、丸くて平らなサーフボードに乗れば、誰でも簡単に即座に曲がることができます。
小さな波ならば、スープやリップに対しても当てることができるかもしれません。
このタイプのサーフボードはフラットな形状であり、ボトムの腹部を使って曲げるため、ノーズの向きがコロコロと変わります。
ノーズを左右に振る動作は「Yaw(ヨー)」と呼ばれますが、私たちジャッジはこの動作には一切評価を行いません。
なぜなら、レールが使われていないからです。
再度強調しますが、サーフィンのターンにおいては「Yaw(ヨー)」じゃダメです。

 

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どこかの誰かの写真をお借りしました。ありがとうございました。

このケリーのカットバックの写真をご覧ください。

リップの直前にこのカットバックのトラックの始まりが見えますが、ケリーのボードのノーズが180°回転するまでに、ボードが走った距離(トラックの長さ)はおそらく5メートル以上、もしかすると10メートル以上にも及ぶでしょう。
本物のサーファーのカットバックは、単にノーズを横に振るだけのコンパクトな動作ではありません。
想像している以上に大きな動作だと考えてください。
波のトップからボトムまで、カールの端からショルダーの端まで、かなり広いスペースを使って行われています。
一方、ノーズを左右に振るサーフィンでは、わずか1メートル四方程度のスペースでマニューバが行われています。
落ちてくるリップにボードを当て、これまで走ってきた方向とは逆にノーズの向きを変えながら、オフザリップやカットバックを完璧に行っているつもりかもしれませんが、周りの人々には誰も気づきません。
ボードが走っていないため、トラックは何も残りません。

 

オマケですが(本業はシェイパーなので)、この写真の時にケリーのボードがどれくらいロールしているのかを、シェイププログラムを使って確認してみました。

シェイプルーム内のボードに、この写真と同じような角度に見えるようにRoll(ロール)とPitch(ピッチ)を加えてみました。

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2番目の画像は、視点を変えてボードをノーズ側から見たものです。
ボードが想像以上にロールしている(傾いている)ことが分かります。
また、曲がるためにはロッカーが非常に重要であることに気付くでしょう。
さらに、このターンの重要な要素であるRoll(ロール)とPitch(ピッチ)を安定して維持するためには、ボードの速度による遠心力とレールのフォイル、ボリュームのバランスが大きな役割を果たしています。

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良く走るサーフボードが曲がらないなんてウソです。
ボードは走ることで曲がります。
サーフボードが曲がるのは、ロールして(傾けて)走った結果です。
そして曲がるための重要な要素はロッカーです。

これがレールサーフィンです。
サーフィンの基本はボードスピードです。
止まったサーフィンから卒業しましょう。

 

コバルトボード

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私は小さく凝縮されたカッコいいボードが好きだ
子供の頃、初めて鉄腕アトムの弟コバルトを見たときはちょっとショックだった、顔が間延びしていてマヌケな感じなのだ。

コバルトはひょうきんで性格が優しく、大好きなのだが、サーフボードとなると別の話。
わたしは間延びしたマヌケなボードはシェイプしたくない。

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こんなボードはゴメンです

新しいボードをデザインするときに考えること
私はシェイプするとき、浮力、揚力、レールボリュームなどを考えながら、速いテイクオフ、高い加速性、安定性などの能力をボードに盛り込む。
これらの
要求をすべて満たそうとすると、ボードの各部はどんどん大きなものとなっていく。
長さ、幅、厚さをそのまま維持しようとすれば、ノーズが広がり、テールが広がり、アウトラインやロッカーは単調なストレートなものになってしまう。
いろいろな部分に余分な浮力や広さを持つことで、サーフボードは同じスペックでありながら、どんどん大柄なものになっていく。
すると、トップスピードは低下し、動きの鈍い、間延びしたボードとなってしまう。

カッコ悪いボードは好きじゃない
私の理想のシェイプは、必要な揚力と浮力を確保しながら全体的にスッキリと小さく小柄なボードにまとめることだ。
「最小のボリュームで最大の揚力を得ること」
これがすべての
OGMサーフボードに流れるコンセプトだ。
これを追求することで、速く、加速性が高く、コントロールのしやすいボードが生まれる。

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OGMサーフボードはすべてが小さい
私のサーフボードは同じスペックの他のボードと比べると、数字から来る大きさよりもずっと小柄に見えるはずだ。
私はボードを考えるときに、たとえばテールとかレールとか、ボードの一部分だけを見て判断しない。
それぞれのつながりを最重視し、効率良くボード全体を使えるようなデザインを考えている。
サーフボード全体を使うことで、各部にたまった余分なボリュームを捨てることが可能となる。

そして、サーフボードはすべて曲面でつながっているため、ロッカーもアウトラインもそれぞれ独立した要素とは考えない。
ターンしている時、斜めにレールが沈み込んだボードをイメージして欲しい。
この時、アウトラインはロッカーのように使われ、ロッカーはアウトラインのように使われていることに気がつくはずだ。
理想的なサーフボードは、ロッカーとアウトラインの間に特異点(境界点)が無く、それはロールやピッチの角度の変化でスムーズに切り替わる。
それは同時に、デッキラインもボトムロッカーと同じように大切だということを認識させられる。
このようにボードを総合的、全体的にとらえることが最も重要で、そこからデザインをスタートさせる。
そして容赦なく不要な部分を削ぎ落としていく。

余分なボリュームを持たないボードはスピード性が高く快適だ
この努力を続けることで最高の性能を持ちながら、小さくて非常に扱いやすいボードが誕生する。
これらをシェイプ中ずっと考えながら繰り返し、すべてのボードに対して行う。

シェイプは戸惑うことばかりだが、強い意志で考えて行けばパズルは解ける
解けない謎は1つもない。
サーフボードのシェイプはとても芸術的だが、裏側にはまぎれもなく物理学が働いている。
デザインを決定する上で物理学と数学の知識はとても重要だ。
そして、失敗の原因をさぐる上でもその知識はひじょうに大切だ、知識を持ち合わせないと何度も同じ間違いを繰り返してしまうことになる。