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レールサーフィン

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短くて幅広く、丸くて平らなサーフボードに乗れば、誰でも簡単に即座に曲がることができます。
小さな波ならば、スープやリップに対しても当てることができるかもしれません。
このタイプのサーフボードはフラットな形状であり、ボトムの腹部を使って曲げるため、ノーズの向きがコロコロと変わります。
ノーズを左右に振る動作は「Yaw(ヨー)」と呼ばれますが、私たちジャッジはこの動作には一切評価を行いません。
なぜなら、レールが使われていないからです。
再度強調しますが、サーフィンのターンにおいては「Yaw(ヨー)」じゃダメです。

 

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どこかの誰かの写真をお借りしました。ありがとうございました。

このケリーのカットバックの写真をご覧ください。

リップの直前にこのカットバックのトラックの始まりが見えますが、ケリーのボードのノーズが180°回転するまでに、ボードが走った距離(トラックの長さ)はおそらく5メートル以上、もしかすると10メートル以上にも及ぶでしょう。
本物のサーファーのカットバックは、単にノーズを横に振るだけのコンパクトな動作ではありません。
想像している以上に大きな動作だと考えてください。
波のトップからボトムまで、カールの端からショルダーの端まで、かなり広いスペースを使って行われています。
一方、ノーズを左右に振るサーフィンでは、わずか1メートル四方程度のスペースでマニューバが行われています。
落ちてくるリップにボードを当て、これまで走ってきた方向とは逆にノーズの向きを変えながら、オフザリップやカットバックを完璧に行っているつもりかもしれませんが、周りの人々には誰も気づきません。
ボードが走っていないため、トラックは何も残りません。

 

オマケですが(本業はシェイパーなので)、この写真の時にケリーのボードがどれくらいロールしているのかを、シェイププログラムを使って確認してみました。

シェイプルーム内のボードに、この写真と同じような角度に見えるようにRoll(ロール)とPitch(ピッチ)を加えてみました。

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2番目の画像は、視点を変えてボードをノーズ側から見たものです。
ボードが想像以上にロールしている(傾いている)ことが分かります。
また、曲がるためにはロッカーが非常に重要であることに気付くでしょう。
さらに、このターンの重要な要素であるRoll(ロール)とPitch(ピッチ)を安定して維持するためには、ボードの速度による遠心力とレールのフォイル、ボリュームのバランスが大きな役割を果たしています。

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良く走るサーフボードが曲がらないなんてウソです。
ボードは走ることで曲がります。
サーフボードが曲がるのは、ロールして(傾けて)走った結果です。
そして曲がるための重要な要素はロッカーです。

これがレールサーフィンです。
サーフィンの基本はボードスピードです。
止まったサーフィンから卒業しましょう。

 

コバルトボード

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私は小さく凝縮されたカッコいいボードが好きだ
子供の頃、初めて鉄腕アトムの弟コバルトを見たときはちょっとショックだった、顔が間延びしていてマヌケな感じなのだ。

コバルトはひょうきんで性格が優しく、大好きなのだが、サーフボードとなると別の話。
わたしは間延びしたマヌケなボードはシェイプしたくない。

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こんなボードはゴメンです

新しいボードをデザインするときに考えること
私はシェイプするとき、浮力、揚力、レールボリュームなどを考えながら、速いテイクオフ、高い加速性、安定性などの能力をボードに盛り込む。
これらの
要求をすべて満たそうとすると、ボードの各部はどんどん大きなものとなっていく。
長さ、幅、厚さをそのまま維持しようとすれば、ノーズが広がり、テールが広がり、アウトラインやロッカーは単調なストレートなものになってしまう。
いろいろな部分に余分な浮力や広さを持つことで、サーフボードは同じスペックでありながら、どんどん大柄なものになっていく。
すると、トップスピードは低下し、動きの鈍い、間延びしたボードとなってしまう。

カッコ悪いボードは好きじゃない
私の理想のシェイプは、必要な揚力と浮力を確保しながら全体的にスッキリと小さく小柄なボードにまとめることだ。
「最小のボリュームで最大の揚力を得ること」
これがすべての
OGMサーフボードに流れるコンセプトだ。
これを追求することで、速く、加速性が高く、コントロールのしやすいボードが生まれる。

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OGMサーフボードはすべてが小さい
私のサーフボードは同じスペックの他のボードと比べると、数字から来る大きさよりもずっと小柄に見えるはずだ。
私はボードを考えるときに、たとえばテールとかレールとか、ボードの一部分だけを見て判断しない。
それぞれのつながりを最重視し、効率良くボード全体を使えるようなデザインを考えている。
サーフボード全体を使うことで、各部にたまった余分なボリュームを捨てることが可能となる。

そして、サーフボードはすべて曲面でつながっているため、ロッカーもアウトラインもそれぞれ独立した要素とは考えない。
ターンしている時、斜めにレールが沈み込んだボードをイメージして欲しい。
この時、アウトラインはロッカーのように使われ、ロッカーはアウトラインのように使われていることに気がつくはずだ。
理想的なサーフボードは、ロッカーとアウトラインの間に特異点(境界点)が無く、それはロールやピッチの角度の変化でスムーズに切り替わる。
それは同時に、デッキラインもボトムロッカーと同じように大切だということを認識させられる。
このようにボードを総合的、全体的にとらえることが最も重要で、そこからデザインをスタートさせる。
そして容赦なく不要な部分を削ぎ落としていく。

余分なボリュームを持たないボードはスピード性が高く快適だ
この努力を続けることで最高の性能を持ちながら、小さくて非常に扱いやすいボードが誕生する。
これらをシェイプ中ずっと考えながら繰り返し、すべてのボードに対して行う。

シェイプは戸惑うことばかりだが、強い意志で考えて行けばパズルは解ける
解けない謎は1つもない。
サーフボードのシェイプはとても芸術的だが、裏側にはまぎれもなく物理学が働いている。
デザインを決定する上で物理学と数学の知識はとても重要だ。
そして、失敗の原因をさぐる上でもその知識はひじょうに大切だ、知識を持ち合わせないと何度も同じ間違いを繰り返してしまうことになる。

自分に合ったサーフボードを見つける

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コンペティターは試合中、カール寄りの波のホレたところで演技します

なぜなら、波のきびしくパワーのある部分で技をかけないと高得点に結びつかないからです。
波の大きく湾曲した部分でボードをスムーズにコントロールするためには、強力なロッカーと大きくカーブしたアウトラインが必要です。
そして、現在のコンペティションボードは、機敏な反応性と高速での操作性を追求し、余分な浮力は持ち合わせていません。
ボトムにはコンケーブデザインが主流で、ライダーの体重を浮かせる上向きの力は主に走行時に発生する揚力に依存しています。
ただし、このような揚力を中心としたボードは低速では効果を発揮できません。
揚力は速度の二乗に比例するため、ボードの速度が半分に減少すると、生成される揚力は四分の一になり、ライダーの体重を支えきれずに沈んでしまうからです。

 

これに対して、ゆったりとしたライディングを望むサーファーは、波のカールから離れた緩やかな斜面でのマニューバーに焦点を当てます

小さなパワーのない波でも優れた走行性能を持ち、スピードの減少が緩やかなボードデザインを検討します。
このタイプのボードでは、浮力を効果的に利用することが重要です。
浮力は揚力とは異なり、サーフボードの速度に依存しません。
ボードの速度が低下することで揚力が減少しても、うまく浮力がサポートしてくれれば、途切れることなく走り続けることができます。
アルキメデスの原理によれば、ボードが水中に沈むことで浮力が生じます。
ボードが水中でどのような形状で沈むかによって、水からの抵抗が増加するため、高速なボードは望めないかもしれませんが、様々な角度で水に沈むボードの形状を検討し、それを調整することで、低速でも失速しにくいボードを実現することができます。

 

これは、ロングボードについても同じようなことが言えます

パフォーマンス系のロングボードは前者に分類され、一方でクラシックなスタイルを追求するロングボードは後者に該当します。
自分のサーフィンのスタイルがどのあたりに属するのかを考えてみるのも良いかもしれません。

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これらの2つのボードはおそらく対極のコンセプトを持っていると思われますが、どちらか一方に偏ったサーフボードが最善だとは全く思えません。
双方のアイデアやデザインを少しずつ取り入れることで、あなた自身に適した乗りやすいサーフボードを作り上げることが可能です。

絶対にコンペティション志向だけ、あるいは完全にリラックス志向だけにこだわるのではなく、また、ロングボードであっても、100%パフォーマンス志向か100%クラシック志向かということにとらわれずに、
自身が波のどの位置で技を発揮することが多いかを考慮して、ボードのオーダーについて相談することで、驚くほど適したサーフボードに出会うことができるでしょう!

 

 

戦争ばっかの地球人は宇宙人の笑い者

 

「COSMOS」

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カール・セーガン博士が執筆した「COSMOS」という本は、私の大好きな本です。
発行されたのは40年以上前の1980年です。
私はこれまでにおそらく10回以上も読み返してきたでしょうか。
その中でも、私が最も好きな箇所は次の部分です。

「手のひら一杯の砂の中には、1万個ほどの砂粒が存在する。
これは、晴れた夜に肉眼で見ることのできる星の数よりも多い。
しかし、私たちが見ることのできる星は、宇宙に存在する星のごく一部に過ぎない。
夜に私たちが目にすることができる星は、極めて近い星のほんの一部なのだ。」

宇宙には約1000億個の銀河が存在し、それぞれの銀河には平均して約1000億個の星があります。
宇宙は計り知れないほどの豊かさを持っており、地球上のあらゆる浜辺や砂漠にある砂粒の総数よりもはるかに多くの星が存在します。

 

「CONTACT」

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そして、カール・セーガン博士原作の映画「CONTACT」には、以下の一節があります。

なぜ私たちはここに存在しているのか。
私たちは一体何者なのか。
地球外の知的生命体は存在するのか。
地球人だけだと宇宙(スペース)がもったいない。
宇宙の風景が私たちに教えてくれたのは、私たちがいかに小さく、貴重な存在であるかということだ。
私たちはより大きな全体の一部であり、決して孤独ではない。

 

戦争ばっかの地球人は宇宙人の笑い者

宇宙人の笑い者カール・セーガン博士は、さまざまな場所で宇宙人の存在の可能性について説いています。
同時に、この地球は偶然がいくつも重なった特別な天体だとも述べています。
私たち地球人は、未だ他の星の生命体に遭遇していません。
もしかしたら宇宙において地球だけが生命の存在する星なのかもしれません。
それなのに、地球人は互いに殺し合い、戦うことをやめません。
地球人の歴史は戦争の歴史ばかりです。
何度経験し、どれほどひどい目に遭っても、私たちはまったく学習しません。
あれだけ悲惨な戦争を経験した日本も、また戦争のできる国へ変わろうとしています。

戦争ばっかの地球人は宇宙人の笑い者です。

 

コンペティションボードについて

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私はサーフィンを見るのが好きだ。
特にうまいサーファーのサーフィンを見るのは最高に気分が良い。
サーフィンを見たいからジャッジになったわけではないが、いったん足を突っ込むとのめり込んでしまう性格のため、1994年にJPSAから依頼されて始めたこの仕事も、WSL(ASP)も含めるとプロコンテストのジャッジだけで年間100日を越え、それをすでに20年以上も続けていることになる。

しかし、私はジャッジである前にシェイパーなので、真っ先に目の行ってしまうところは、いろいろなセクションで選手がどのようにボードをコントロールしているのかであったり、マニューバーにおけるレールの使われ方であったりする。

上手い選手がきれいにサーフボードを使う姿を見ることは本当に気持ちが良い。
絶妙なレールの入りぐあい、ストレスの無いターンのつながり、見ていて惚れ惚れしてしまう。
また逆に、余計なお世話なのだが、マニューバーの途中で突然レールが引っかかってワイプアウトしたり、本来抜けれそうなセクションが抜けられなかったりする選手を見ると、その選手の使っているボードが本当に彼に合っているのかなど、よけいなお世話なのだが、ついつい心配になってしまう。

こんなことを1日10時間、年間100日、20年以上もやっていると、ほとんど1本のライディングを見ただけで、その選手とボードの関係性が見えてくる。
もう少しだけスピード性の高いボードに乗り変えれば、この選手はずっと見栄えが良くなるだろうなとか、もうちょっとロッカーを強くすれば、さらにマニューバーのクオリティーが上がるだろうなとかである。

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午前中、クリーンなコンディションで最高の調子を保ち何ラウンドも勝ち上がってきた選手が午後になって風がオンショアに変わるやいなやボードスピードが極端に落ち、調子を崩して敗退してしまう選手がいる。
明らかにボードのアンダーボリュームが原因だ。

しっかりとしたコーチがいれば、オンショアの波のパワーダウンに対して選手にボードのチェンジを勧めるのだろうが、今まで調子良く勝ち上がってきたサーフボードを自らチェンジするのは非常に勇気の要ることで、結果的にボードを変えずに敗退してしまう選手が多い。
これは私のライダーたちにも言えることであるが、もちろん試合中は選手たちとジャッジは会話できる状況にないので、いつも試合終了後での反省となってしまう。

WCT選手の使っているボードは、最高のパフォーマンスを引き出すために、よぶんなぜい肉(浮力)を落とし、バリバリにチューンされたF1マシンのようだ。
最高のサーフポイントと十分なコンテスト期間、選手は最高の波で演技することだけを考えてボードを選択すれば良い。
しかも、試合中はしっかりとしたプライオリティーシステムが確立されているので、テイクオフの速さを競ったり、波を取り合ったりする必要もない。
ここでは反応の早い、ローボリュームのサーフボードが真価を発揮する場所だ。

これに対して、WQSや日本国内の試合では、試合期間が短く、良いコンディションを待っているだけの余裕がない。
小さな波やオンショアの悪いコンディションでも試合することを想定したボードが必要だ。
しかも4メンヒートが主体となるため、パドルの速さやテイクオフの早さも考慮したボード選びとなるだろう。
WCT選手のようにたくさんのボードを持つことのできないサーファーにとっては、1本のボードでどれだけ幅広く波に対応できるかどうかが重要なポイントとなってくる。

試合で安定して勝ち上がるためには、さまざまなコンディション、そして幅広い波のレンジで自分のパフォーマンスを発揮できるボードを手に入れることが大切である。

ジャッジの視点からのスコアーアップ

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ジャッジの視点から見た、スコアアップのための簡単なアドバイスをご紹介します。

今回は、ライディングの要素であるマニューバーがジャッジによってどのように評価されるのか、テイクオフから順に順を追って説明します。
ジャッジが注目しているポイントを知ることで、選手の方々はどのような動きをすれば高得点を獲得できるかを理解することができるでしょう。
ただし、この情報はコンテストで勝つためではなく、自身のサーフィンスキルを向上させるためのものです。
上手なサーファーになれば、結果は自ずとついてくるでしょう。
もちろん、現役ジャッジの方々も十分に勉強をしてくださいね。

 

テイクオフ

ライディングの最初の重要な要素はテイクオフです。
上級レベルのクラスでは差があまり見られませんが、ビギナーズクラスやレディースクラスでは、高得点を獲得するためのポイントがいくつか存在します。
テイクオフのポジションや波の状況などから判断し、最初のマニューバーへの移行が遅れたり、バランスを崩したり、波のショルダーから離れすぎた位置でのテイクオフは低評価となります。
上級者には、スムーズなマニューバーへの移行、バランスを保ったままのコントロールされたレイトテイクオフ、カバーアップテイクオフ(テイクオフ時からチューブへの進入)などが高く評価されます。

 

ボトムターン

テイクオフの次に来るのがボトムターンです。
ボトムターンは、すべてのマニューバーの基本です。
ターンの大きさやポジション、波のトップへ向かう角度などを基準に、スピードやパワー、コントロールが評価の基準となります。
スプレーの大きさやレールの入り具合、トラックの深さなどによって、ジャッジはパワーを視覚的に判断しています。

 

リエントリー

ブレイクした白波やリップにボードを当て、再び波のフェイスに戻るトップターンのことです。
一般的にはオフザリップやオフザトップと呼ばれるマニューバーで、ジャッジの世界では、統一的にこの動作をリエントリーと呼んでいます。
ボトムターンの深さ、波の頂点への角度、リップでのポジション、ボードの出方、そして再びボトムへ向かうスピードなど、一連の動作全体でのパワーとコントロールが評価されます。
選手の技術レベルによって難易度に大きな違いがあるため、得点に大きな差が生じるマニューバーとなります。

 

カットバック

ボードのノーズを逆方向に向ける動作のことで、ボトムターンと同様にほとんどのマニューバーの基本となっています。
スピードを減らさずにパワーとコントロールを保ちながら、もう一度カールに戻ることが重要な要素となります。
このマニューバーは、波のカール付近で素早く行うスナップのようなものから、波のショルダーから離れた部分でレールを長く安定して使うラウンドハウスカットバックなど、さまざまなバリエーションが存在します。

 

リコシェ

写真 2

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、リコシェとはカットバックの最後に、これまで進んできた方向のリップやスープにボードを当てて、再び波のショルダー方向へ向かうマニューバーを指します。
このマニューバーでは、ボードを波のどの位置に当てているのかや、全体の流れがスムーズに行われているかなどが評価の対象となります。
リコシェ自体は単独で行われることはあまりありませんが、直前に行われたカットバックの後半でのスピードの大きさを評価する上で重要なマニューバーとなります。

 

チューブライド

波がブレイクする際に形成される空間に体を隠すことで、過去から現在まで最も難易度が高く重要なマニューバーの一つです。
チューブライディングは、他のマニューバーとは異なり、ボードの動きではなく、波とのタイミングやポジション、レールワークなどを基に評価されます。
採点の基準としては、チューブの深さや滞在時間、チューブ内でのマニューバー実施の有無、チューブへの入り方や出方などのクオリティーが重要です。

 

エアリアル

革新的で進歩的なマニューバーの代表的存在であるエアリアルについて述べましょう。
エアリアルは多様なバリエーションを持ち、現在でも新たな種類のエアリアルが生み出され続けています。
このマニューバーの評価において重要な要素はいくつかあります。
まず、飛び出す位置がどこであるかが判断されます。
それはリップから飛び出したものなのか、波のバンプ(チョップ)からのものなのかによって異なります。
チョップからのエアリアルは「チョップホップ」と呼ばれ、スコアが非常に低くなり、本来のエアリアルとは明確に区別されます。

また、ランディングも極めて重要な要素です。
次のターンに繋がるスピードを保っているか、波の後方に取り残されたりプローンアウトしてしまったりすることなど、これらはエアリアルのメイン部分である空中にいる時間ではないものの、完成度の観点でスコアに大きく影響します。

最後に、最も重要な要素である空中部分の評価です。
高さやローテーション(回転)の度合い、空中姿勢、グラブの有無など、評価される要素は多岐にわたり、複雑です。

  1. 波の何処で行われたのか
  2. 高さ、ローテーションの有無
  3. コントロール(空中での姿勢、グラブの有無など)
  4. ランディングの完成度

 

 

フローター

かつて「フローター」と言えば、白波の上を長く滑るだけのフォームフローターを指し、それほど高いスコアは得られませんでした。
しかし、現代のサーファーは進化し、チューブに入れるようなホレた波のロールの上でもフローターを行っています。
特にクローズドアウトセクションのロール上でのフローターは高い難易度を持ち、現在では高い評価を受けるマニューバーとなっています。

 

波の大きさ

波の大きさが必ずしも良い波を意味するわけではありません。
現在のジャッジ基準では、波の大きさは考慮されません。
ジャッジはあくまでもマニューバーのクオリティーや難易度を評価しています。
ただし、ワイメアのような特別に大きな波で行われる競技では、波のサイズが重要な要素となります。
巨大な波にテイクオフするサーファーは、最大級のコミットメント(積極性)を示すこととして、ジャッジは高く評価しています。

 

 

波の優先権 「先に立った方が優先じゃないの?」

 

 

試合中、選手たちはギリギリの状況で戦っています。
そのため相手の選手と接触したり、同じ波に乗ったりするなど、お互いの演技を妨害する状況が起こることがあります。

このような時、ジャッジはどちらが悪かったのかを判定しなくてはなりません。
今回はコンテストでの波の優先権(所有権)の判断のしかたについて説明します。

日本のアマチュアの試合では、今まで長い間ファーストスタンディングルールが主流でした。
これは先に立ったサーファーがその波の絶対的な優先権を得ることができるルールです。
たとえ波のショルダーにいても、先に立ち上がりさえすれば、その波の権利を得ることができるため、長いボードを使用するサーファーや体重が軽くテイクオフの早いサーファーに非常に有利なルールでした。
このルールはジャッジにとっては非常に判断しやすく簡単なものです。
どちらが先に立ったのかであれば、経験の少ないジャッジでも簡単に判定できるからです。
むかし、スコアーをマニューバーの回数やライディングの長さで採点していたのと似たようなものです。

ところがサーフィンが進化し、マニューバーの基準がパワーと過激さを求め、波のクリティカルセクションでの演技を重視するようになると、この優先権の判断だと実態にそぐわなくなります。
カールに近い厳しいセクションから立ち上がる選手よりも、長いボード使ってゆるやかなショルダーから先に立ち上がった選手に優先権を与えていたのでは、パワーや難易度の高いサーフィンの未来は無くなってしまうからです。

現在のルールでは、立ち上がった時間に関係なく、波のカールにより近いサーファーに優先権を与えています。
ここで重要な部分は、優先権を決定しているのはあくまでも、サーファーの波に対するポジションであって、どちらが先に先に立ち上がったかではないということです。
ファーストスタンディングは過去のルールです。
基本的にはインサイドポジション(波の奥側)を獲得したサーファーにその波の所有権が与えられます。

 

おめ、あとかい立ったっぺ

 

でも、これはあくまでも試合の中でのルールです。

いくら自分の波だからといって、フリーサーフィンでこんなことをやっていたら、あなたは間違いなく嫌われます。
海の中には、子ども、女の人、先輩、後輩、レジェンド、いろいろな人がさまざまな種類のボードに乗ってサーフィンしています。
ボディーボーダーや、SUP(スタンドアップパドルボード)のサーファーもいます。
基本的には、自分よりも弱い立場のサーファーを守ってあげるスタンスをとるサーファーの方が、ガツガツしているサーファーよりもカッコいいし好かれます。

やはり、他のサーファーをリスペクトし、楽しく、仲良くサーフィンする気持ちが大切ですね!

 

 

EPSの長所と短所

サーフボードの芯材として使われるフォームは主に2種類あります。
一般的なのはPU(ウレタンフォーム)で、ほとんどのサーフボードはこれをポリエステル樹脂でラミネートする製法をとっています。
もう一つはEPS(発泡スチロール)を芯材に使ったもので、ラミネートにはエポキシ樹脂を使っています。

フォーム(芯材)の強度
ひと昔前までのEPSはとても弱く、セルの基本なっているビーズどうしの融着もいい加減で、そのままの標準ラミネートではとても耐えられないものばかりでした。
そのため、シェイプの段階で表面に硬質ウレタンなどをバキューム圧着してからラミネートする製法が主流でした。

現在のサーフボードに使われているEPSは非常に良くなっています。
安定したセルを持ち、目的に合わせて発泡密度を選べば、PUとほとんど変わらない強度のフォームが簡単に手に入ります。

ラミネートの強度
EPSのラミネートに使われるエポキシ樹脂は、PUで使われているポリエステル樹脂と比べると、工業的に非常に優れています。
強度試験のデータでは、ポリエステル樹脂の2倍以上の数値を持つ項目もいくつかあります。
もちろん、これは樹脂単体で計測した力学的な数値なので、単純にサーフボードが2倍強いという意味にはなりませんが、実際にポリエステルと同量のガラスクロスを使ってラミネートすると、かなり丈夫なボードができあがります。

重量の違い
EPSとPUのボードのラミネートの部分には、重量の違いはほとんどありません。
したがって、これらのサーフボードの重量の違いは、ほとんどすべて芯材であるフォームの重量(比重)の違いだと言えます。
EPSとPUの比重(単位体積あたりの重量)の違いはとても大きく、ボードの体積が増えるに従ってその重量の差はどんどん大きなものとなって行きます。
実際には体積の大きなボードほどEPSの比重の恩恵を受けるので、ショートボードよりロングボード、ロングよりSUPと、ボードが大きくなるにつれて軽さが際立ってきます。

現在、SUPに使われているフォームがほとんどEPSなのはこの理由からです。

EPSの長所と短所
では実際にサーフボードをEPSでつくると、どんなメリットとディメリットがあるかをサーフボードのタイプ別にお話します。
EPSについては、たくさんのサーフボードメーカーがそれぞれ違った評価をしているので、あくまでもOGM社の話ということで聞いてください。

 

コンペティションボード GHDnobu best現在OGMの標準的なショートボード(コンペボード)で、体重65kgくらいまでのサーファーのボードをPUでつくると、重量は2.2~2.8kgくらいです。
このクラスのサーフボードをEPSで軽くつくると、1.8~2.0kgくらいで仕上げることが可能です。 でも、軽すぎるボードに対して、ライダーの反応はイマイチです。
「ターンが安定しない」 「エアリアルの着水の時、ボードが沈まずに波から弾かれてしまう」 だいたいこのように、良くない意見が帰ってきます。

では、ガラスクロスを増やしラミネートを厚くして、重量をPUと同程度まで増やしたらどうでしょうか? とてつもなく丈夫なサーフボードができるのですが、硬すぎるボードはどうもコントロールが難しいようです。
「小さな波だとスピードが出て良いのだが、大きい波だとターンが難しい」 ライダーによって微妙に表現は違いますが、おおむねこんな感じの評価が多いです。
ライダーの好みでまちまちなので、はっきりとは言い切れないのですが、OGMでは5’8″以下のサイズのボードではPUが主流です。
そして、5’9″あたりから大きくなるにしたがってEPSでのオーダーが少しづつ増えて来て、全体としてのEPSの割合は25%程度となります。

大きめのコンペティションボード MC-1MC-1 身体の大きな人のボードをPUで作るとき、30ℓを超えるボードや6フィートを超えるボードでは、完成した重量が3kgを大きく超えてきます。
出来上がったボードを持つと、どうしてもズッシリとした感じの重い仕上がりで、試合向きのボードというイメージではありません。
このような時、EPSは非常に有効な素材となります。
EPSはテイクオフが早く、取り回しが軽いため、ボードの大きさを感じません。
また、EPSのボードが硬いという評価も、このクラスのボードを使うサーファーはガッチリとした体格が多いせいか、ほとんど聞かなくなります。
OGMではこのクラスのコンペボードのほとんどがEPSでのオーダーです。

また、サーフィンする機会の少ない人が、早いテイクオフやスピードを求め、自分の体格よりも大きめのボードを選ぶ場合にもEPSは有効となります。
ボードの重量がPUと比べて非常に軽くなっているので大きめのボードであっても、乗ってからのパフォーマンスにあまり影響を与えず、実際のその大きさを感じさせません。

 

EPSロングボード

現在のロングボードコンテストは主にクラシックマニューバーを中心としており、そのために以前ほどEPSの使用比率は高くありません。
しかし、EPSとPUの重量には1.5〜2.5kgの差があり、高いパフォーマンスを求めるロングボーダーたちにとっては、EPSはなお根強い人気を持っています。
実際、OGMでは約40%のロングボーダーがEPSを選択しています。

一方、ミッドレングスボードやクラシックロングボードは、クルーズ性能を重視しており、パフォーマンスよりもその乗り心地が売りです。
サーフボードの軽さはあまり重要ではありませんが、EPSは一般的に艶のある仕上げには向かないことがあります。
もし美しい仕上がりを求めるのであれば、PUボードを選ぶことをおすすめします。
深みのあるティントカラーやマーブル模様などは、PUボードとポリエステル樹脂の組み合わせの得意とするところです。
個性豊かなラミネートや仕上げ、カラーセンスにこだわった美しいPUボードを、カスタムオーダーすることも可能です。
このカテゴリーのOGMサーフボードは、ほとんどがPU素材を使用して制作されています。

 

 

 

EPSの浮力についての考察

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「EPSの浮力が大きいのは中に空気がたくさん入っているからだよ」
こんな話、聞いたことないですか?
アルキメデスが聞いたら腰を抜かしそうなレベルの話ですが、今回は、そのEPSの浮力について考えてみたいと思います。

まずは、サーフボードの浮力の大きさを計算してみます。
アルキメデスの原理から、浮力は次の式で表されます。
F=-ρVg
F:浮力
ρ:ボードを浮かせている海水などの密度
V:ボードの体積
g::重力加速度
重力加速度gは一定なので、上式からわかるように、浮力はボードの体積とそれを浮かせている海水などの比重で決まります。
海水の比重についても、厳密には場所や温度によって少し変化しますが、だいたい何処でもいつでも一定だと考えて問題無いでしょう。
したがって浮力の大きさは、サーフボードの体積だけで決まります。
つまり、サーフボードの中に空気やヘリウム、たとえ水素ガスが入っていたとしても浮力は何も変わらないということです。

実際には、サーフボードの自重分に当たる重力が相殺されるので、EPSで軽く作られた分だけ浮力が増えることになります。
たとえばEPSで体積30ℓ程度のボードを作ると、重量はPUより600グラムほど軽く作ることができます。
海水の密度を簡単のため1とすると、30ℓのボードの浮力は30kgとなります。
増加した浮力の割合を計算すると
0.6kg÷30kg=0.02=2%
ちょっと意外な結果になりました。
EPSで同じサイズのボードを作っても浮力は2%程度しか増えていないということです。

しかし、実際にEPSのサーフボードに乗った感触の違いは明らかに別次元のもので、とても2%の違いではないと思う人ばかりだと思います。
これは何処から来るのでしょうか?
このことは、質量(慣性)の違いによるものだと推測できます。
PUで作った体積30ℓのサーフボードの質量が3kgだとすると、次の式から600グラムの質量の違いは20%です。
0.6kg÷30kg=0.2=20%
ニュートンの運動方程式(運動の第2法則)
F=max__ 1
F:力
m:質量
a:加速度
この式によれば、慣性の大きさを表す質量mと加速度aは逆比例の関係にあります。
つまり20%軽いサーフボードは、同じ力Fが加わったとき20%大きな加速度で運動します。
これは、少しの力が加わっただけでボードが大きく反応するということです。
このことが不安定さを生み、感覚的なふわふわ感となり、

「EPSの浮力が大きいのは中にたくさん空気が入っているからだよ」
と言わせている本当の理由だと思われます。

では、実際に役に立つ話として、
EPSでサーフボードを作った場合どのくらい小さく作れば良いかというと、
単純に浮力だけをそろえるのであれば、水の比重を1とすると、0.6ℓだけボードの体積を減らせば良いので、マシンシェイプの設計プログラムでシミュレートすると、だいたいこのあたりのサイズのボードで約1.6mm(1/16インチ)薄くシェイプすればよい計算になります。

また、幅と厚さを同じにして長さを短くするのであれば、ボードの形にもよりますが、4cm(1.5インチ)くらい短くすれば良さそうです。

ロングボードの場合ですと、私のシェイプする9’0”クラスのPerformerは60ℓくらいの体積があって、EPSで作ると約1.2kg程軽く仕上げることができます。
これで、浮力をそろえるため1.2ℓ体積の少ないボードをシミュレートすると、やはり1.6mm程度薄くシェイプすれば良いという結果になります。
ロングの場合、レギュレーションがあるので、長さを短くするわけにはいきません。
同じ厚さで、幅だけを変化させて1.2ℓの体積を調整しようとすると、1.2cmくらい細くすれば良い計算になります。

もう一つオマケで、最近、話題のウエイブプールですが、真水のプールではサーフボードの浮力が減少します。
海水1kgには約30gの塩分が溶けていて、
水温24℃での比重は約1.024です。
つまり、同じボードでも真水のプールの中では、浮力が海水より約2.4%減少していることになります。
さっき計算したEPSの浮力の増加分とあまり変わらない数値ですね。
つまり、いつも乗っているPUのボードとまったく同じ大きさでEPSのボードを作れば、真水のウエイブプールでの浮力の減少分をちょうど補ってくれる計算となり、あんがい調子良く働いてくれるのではないでしょうか?