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「EPSはどうも・・・」と言う人のために、

 

乗りやすいEPSをもとめて(サーフボードの芯に乗る)

EPSは、軽量でありながら高い強度を持つ非常に優れた素材で、とても大きな可能性を持っています。
しかし、EPSボードに対するサーファーの評価はさまざまです。
熱烈なファンの中には、サーフボードはEPSでないとダメだと信じる人もいれば、EPSは苦手だという人も数多く存在します。

EPSの長所としては、軽量性、優れた加速性、軽快な動き、高い強度などがあげられます。
一方、短所としては、ボードが跳ねやすくなること、不安定感やフワフワ感があること、速度変化が敏感すぎて走波性に劣ること、大きな波に対してのドライブ性が弱いことなどが指摘されています。

ここで冷静に考えてみると、これらの短所のほとんどは、EPSの長所である軽量性に起因していることがわかります。
すなわち、短所を解消するためには、軽さという長所を犠牲にしなければならないという真逆のジレンマを抱えているということです。

OGMでは、重さの要素を「慣性」と「慣性モーメント」の2つに分けて分析することで、この問題を解決できるのではないかと考えました。

 

「慣性」と「慣性モーメント」

「慣性」と「慣性モーメント」は物体の運動に関連する物理的な性質であり、それぞれ異なる意味を持っています。
例えば、物体が静止している場合、「慣性」は物体がその状態を維持しようとする性質であり、物体の運動状態を変えることに抵抗します。
同様に、物体が運動している場合にも「慣性」はその運動を維持しようとします。
この「慣性」は物体の質量に比例します。
つまり、質量が大きいほど物体はより大きな「慣性」を持ちます。

一方、「慣性モーメント」は物体自体の回転運動や方向性に関連する性質です。
物体が回転している場合、「慣性モーメント」は回転運動に対する物体の抵抗を示します。
具体的には、物体の形状や質量の分布によって決まり、物体が回転軸まわりにどれだけ質量が集中しているかを表します。
回転軸から質量重心までの距離が大きいほど、「慣性モーメント」は大きくなります。

 

サーフボードの場合、「慣性」はボードの運動方向やドライブの安定性に関与しており、重量が重ければ良いというわけではありませんが、乗りやすさに関しては一定の関連性があると考えられます。
ボードが極端に軽くなると、「慣性」が小さくなり、その結果、跳ねやすくなったり、フワフワした感触が生じたり、波の起伏に対する速度変化の大きさや走波性の低下に影響を与える可能性があります。
これらの要素が一般のサーファーにとってEPSボードを難しく、乗りにくいと感じさせる要因となっていると思われます。

これに対し、「慣性モーメント」はサーフボードのコントロールにおいて重要な役割を果たします。
軽量なサーフボードは、下図のどの回転軸に対しても小さな「慣性モーメント」を持つため、敏捷性が高く軽快な動きが可能です。
Roll(ロール)方向の回転軸に対する「慣性モーメント」が小さければ、レールの切り返しなどのボードコントロールが軽くなり、素早く正確な動きが実現できるはずです。
Yaw(ヨー)方向の「慣性モーメント」は、波のトップでのボードの返しの軽さに大きく影響すると思われます。
また、Pitch(ピッチ)方向の「慣性モーメント」の軽さは、波の斜面にボードを素早く的確に合わせるためにはとても重要な要素です。

このように、これら3方向の「慣性モーメント」の大きさは、サーフボードの基本性能に大きく関与しています。

 

フォーム重量の20~30%(ショートボードで約200g程度)のバランスシャフトがストリンガーに沿って埋め込まれている

 

zero-G コンセプト(ボードの芯に重量を集める)

zero-Gでは、フォーム重量の20~30%(ショートボードで約300g程度)の金属製バランスシャフトをボードの重心付近に追加することによって、「慣性」を増加させ、乗りやすさ、ドライブ性、走波性、安定性を向上させています。
この追加された重量は両足の真下のストリンガーに沿って位置するため、ボードのRoll(ロール)方向に対しての「慣性モーメント」は全く増加しません。

zero-Gは、最軽量に作られたEPSボードと同等の瞬発性、正確なコントロール性、機敏性、を持ちながら、PUボードのような乗りやすさ、安定性、ドライブ性を合せ持つ、非常に取り扱いの容易なEPSサーフボードに仕上がっています。

zero-Gは、ボードの芯に乗っている感触が味わえるサーフボードです。

 

 

 

 

 

 

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上級者向け:上達するサーフボード選び

 

 

ボトムターン、オフザリップ、カットバック、フローター……。
一通りのマニューバーを習得し、同じようなことをしているはずなのに、なぜか上手なサーファーと少し違う。

中級者以上のサーファーには、こんな悩みを抱える人が多いのではないでしょうか。

この違いは、マニューバー同士のつながりが影響する場合もありますが、実際には一つ一つのマニューバーのクオリティの差が主な原因です。
もしあなたがコンペティターであれば、これまで使っていたボードよりもさらにワンランク上の性能を持ち、自分に完全にフィットするサーフボードを手に入れる必要があります。

現在の試合では、ジャッジは各マニューバーにおいて最大限のパワーと正確なコントロールを求めています。
上級者は最高のスピード状態から迷いなくレールを寝かせ、スムーズにターンへ移行します。
そして、スピード、パワー、そしてコントロールが融合したマニューバーこそが、ジャッジの心を動かすのです。
手加減やごまかしでは高得点は得られません。

 

信頼できるサーフボードが必要な理由

サーフボードを思い通りに操る方法はただ一つ。
サーファーは重心の微妙な移動だけでボードをコントロールしています。
そのため、サーフボードに対して安心して全力を発揮できるよう、サーファーとボードの間には100%の信頼関係が必要です。

ロッカーの大きさ、アウトラインのバランス、レールの形状、コンケーブの配置、ボードの重量――これらはすべて、サーファーの体型やライディングスタイルに合っていなければなりません。

 

 

理想のサーフボードを手に入れるには

自分にぴったり合ったサーフボードを手に入れるためには、シェイパーがライダーの言葉に耳を傾け、ライディングを徹底的に分析し、微調整を重ねる必要があります。
ロッカーの角度やテールの幅、レール形状など、わずかな調整が乗り味を大きく変え、信頼できるボードを完成させます。

このプロセスはハンドシェイプでもマシンシェイプでも変わりません。
既製モデルの中で長さ、幅、厚さをなんとなく選んだだけでは、自分にとっての“マジックボード”に出会える可能性は極めて低いでしょう。
特に上級者にとっては、ノーズ幅やテール幅、ワイデストポイント、ボリュームバランスの調整など、既存モデルの枠を超えたカスタマイズが必要になります。

シェイパーとのコミュニケーションが鍵

言葉でサーフボードの感触を伝えるのは簡単ではありません。
しかし、ショップスタッフやシェイパーとじっくりコミュニケーションを取り、自分に合った理想のサーフボードを見つけてください。

それが、さらなる上達への第一歩となるでしょう。

 

OGMでは、サーフボード、サーフクリニックなどに関する無料相談を行っております。
お気軽にお問い合わせください。


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コンケーブの話

 

サーフボードデザインにおけるコンケーブの役割

近年、サーフボードのボトムデザインの主流と言えるのが「コンケーブ」です。
カテゴリーを問わず、ほとんどのサーフボードに何らかの形でコンケーブが取り入れられています。
特にショートボードでは、より過激なマニューバーへの対応が求められる中、選手たちはより高いボードスピードとクイックなコントロール性を追求しています。
その結果、ボードはますます小型化し、それに伴うボリュームの減少を補うため、コンケーブは不可欠なデザイン要素となっています。

コンケーブそのものは、Vボトムと同様に古くから存在するデザインで、決して新しい発明ではありません。
しかし、その配置や組み合わせによって無数のバリエーションを生み出し、デザインにおける奥深い要素として進化し続けています。

Masao Ogawa Nijima

 

浮力と揚力のメカニズム

サーフボードがライダーの体重を支えるのは、「浮力」と「揚力」という2つの力の働きによるものです。
浮力はボードが静止していても一定ですが、揚力はボードが動き出すことで初めて発生し、その大きさは速度の2乗に比例して増加します。
パドルやテイクオフでは主に浮力が働きますが、ボードスピードが十分に上がると、揚力が主にライダーの体重を支える力になります。

揚力の発生に大きな影響を与えるのが、ボトムデザイン、とりわけコンケーブの形状です。
揚力はボードが走ることで初めて生まれる動的な力であるため、シェープルーム内だけでの研究や分析が容易ではありません。
また、揚力はボードスピードに大きく依存するため、コントロール性を維持することが非常に難しくなります。
そのため、ボトムデザインには、コンケーブの適切な配置が求められます。

 

開発のプロセスと実践的なテスト

コンケーブデザインの進化には、ライダーやシェイパーからの実践的なフィードバックが重要な役割を果たしています。
実際の波でのテストを通じて得られる感覚的な情報は、設計において不可欠です。
限られたプレーニングの時間内でライダーが得たフィードバックが、次のデザインに反映され、より優れたボードが生まれていきます。

サーフボードデザインにおけるコンケーブは、単なる形状以上のものであり、浮力と揚力のバランスを巧みに調整し、ライダーに最高のパフォーマンスを提供する重要な要素です。

Masao Ogawa Ho’okipa/MAUI

 

コンケーブデザイン理論の礎となったウインドサーフィンの経験

私がコンケーブデザインの理論的基盤を構築する上で、1980年代から1990年代にかけてのウインドサーフィンの開発経験が大きな影響を与えています。

当時、ウインドサーフィンは新しいスポーツとして注目を集めており、ボードのシェイプを担当するのは主にサーフボードのシェイパーたちでした。
ディック・ブルーワー、ジェリー・ロペス、ジミー・ルイスといった名匠たちもウインドサーフィンのデザインに貢献し、優れたシェイプを提供していました。

ウインドサーフィンは、サーフィンの3~5倍の速度で走行するため、そのスピードから得られるデータはサーフボード開発において非常に貴重でした。
私自身もウインドサーフィン中、時速50km近い速度で走るボードの足元に広がる引き波をずっと観察していました。

ボトムへの水のエントリーとリリース、ボードにロールを加えた際の水流の微妙な変化、ターン時のレールの入り方やテールの沈み具合――
これらを目の前で詳細に観察できる機会は他になく、まるで自分専用の最高の水流実験装置を手に入れたような気分でした。

 

シェイパーとしての没頭とセイルボード開発

サーファーとして楽しむために始めたウインドサーフィンでしたが、いつの間にかシェイパーとしてその世界にのめり込んでいる自分に気づきました。

幸運にも、私はウインドサーフィンの名門ブランド「Sailboards Maui」のシェイプを任される機会に恵まれ、当時、年間約200本のペースでセイルボードをシェイプしていました。

セイルボードはその高いスピード特性から、ほとんどのボードに何らかの形でコンケーブデザインを取り入れる必要がありました。
シングルコンケーブ、ダブルコンケーブ、トライコンケーブ、クアトロコンケーブ、スロットコンケーブ、Vコンケーブなど、あらゆるコンケーブをテストし、それぞれの特徴を徹底的に追求しました。

 

鈴木啓三郎プロがスペインのタリファで日本のスピード記録を更新

 

スピードトライアルと効率的なボードデザイン

ウインドサーフィンには「スピードトライアル」と呼ばれる競技があります。
これは、500メートルの平水面をどれだけの時間で走り抜けられるかを競うシンプルな競技です。

1980年代後半、ジミー・ルイスがシェイプしたスピードボードが、それまでヨットが保持していた世界記録を塗り替えたことをきっかけに、ウインドサーフィンは世界中でスピード記録を競い合うようになりました。

この「ただひたすら速く、まっすぐに走る」という純粋な競技に、私は深く魅了されました。
それは、ボードデザイナーとしての技術を本当に試す絶好の場だと感じたからです。

500メートルのコースには、「ブローホール」と呼ばれる風が弱まる区間が点在しています。
これらの区間でも高いスピードを維持するためには、揚力が大きく、抵抗が少ない効率的なボトムデザインが求められます。
揚力抗力比の高さが、この競技における成功の鍵となるのです。

そのため、私はスピードに特化したデザイン理論を追求し、効率を最大限に高めるために、ハイドロプレーンやハイドロフォイルの可能性についても徹底的に研究を重ねました。

1995年 動力を使わない水上クラフトとして日本最速の記録を樹立

 

速さとコントロール性の両立

しかし、どれほど効率的なデザインであっても、最終的に重要なのは「コントロール性」でした。

サーフィンとは異なり、スピードトライアルは平らな海面をまっすぐ走るだけの競技です。
理屈上はロッカーやアウトラインを直線にすれば良さそうですが、実際の海面にはわずかな歪みやバンプが存在します。
高速で正確に走るためには、海面の状況に応じて微妙にコースを修正する必要があります。

特に時速80キロもの速度では、わずかなギャップがボードのエッジに反応し、スピンアウトを引き起こすリスクがあります。
そのため、単に速さを追求するだけではなく、ライダーが正確にコントロールできるボードをデザインすることが重要でした。

これを実現するために、わずかに施したVボトムやロッカー、内側にタックさせたエッジといったデザインの工夫を取り入れました。
一見、速さとは矛盾するような要素を微妙に加えることで、ボードのスピードを大幅に向上させることができました。

高速での正確なコントロール性は、ボードデザインにおける最重要課題のひとつです。
どれほど新しいアイデアや革新的なデザインであっても、それを操るのは人間です。
ライダーが直感的に扱いやすく、思い通りに操作できるものでなければ、どんな性能も活かしきることはできません。

ウインドサーフィンで得られた知識と経験は、コンケーブデザインの理論的な礎となり、現在でも私のサーフボードデザインの基礎を形成しています。

「ライダーが快適にコントロールできるデザインこそが、性能を最大限に引き出す鍵である。」
この確信が、今も私のシェイプの原点です。

 

 

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中級者向け:上達するサーフボード選び

波を安定してつかまえられるようになったら、次はいよいよマニューバーに挑戦する段階です。

サーフィンのマニューバーには、ボトムターン、トップターン、オフザリップ、フローター、カットバックなど、さまざまな技があります。
しかし、実はこれらのほとんどは左右のターンの組み合わせで成り立っています。
つまり、フロントサイドとバックサイドのターン、この2つを完全にマスターすれば、多くのマニューバーをメイクできるようになります。

ターンはシンプルな動作ですが非常に奥が深く、上手なサーファーのターンはレールの入り方がスムーズで力強く、とても美しいものです。

中級者がさらに上達するためには、ターンを習得しやすいサーフボードを選ぶことが重要です。
ただし、「ターンしやすい」とは単に「動きが軽い」という意味ではありません。
同様に、動きにくいボードが適しているわけでもありません。

ターンのきっかけをつかみやすくするためには、レールが厚すぎないボードが理想的です。
また、適度な浮力があり、失速しにくくスピードが安定するボードを選ぶことがポイントです。

一方で、早いテイクオフを求めてノーズやテールを広くしすぎたり、ロッカーが弱すぎるボードを選ぶと、ターンのコントロールが難しくなるため注意が必要です。

サーフボードには、アウトラインやロッカー、ワイデストポイントの位置、ノーズやテールの幅、ボリュームバランスなど、さまざまな重要なスペックがあります。
ボリュームは重要な要素ですが、同じボリュームでも乗り味が異なるボードが無数に存在します。
近年ではマシンシェイプの普及により、ボリュームが数値で表示されることが増えていますが、
「長さを短くした分幅を広げてボリュームを同じにしたから大丈夫!」
などと一言で言えるほど単純なものではありません。

極端なデザインを避け、全体がきれいなカーブでまとまったスムーズなデザインのボードが理想です。
ロッカーも、ノーズやテールで極端な変化がないナチュラルなタイプを選ぶと良いでしょう。

上達への近道は、信頼できるお店や、あなたのサーフィンスタイルをよく理解している人に相談し、自分にぴったりのサーフボードを見つけることです。
自分に合っていないボードで練習を重ねても、なかなか上達しないことがあります。
適切なボードを手に入れて、楽しく効率的にスキルアップを目指しましょう。

 

 

浮力と揚力の違い

初級者がサーフボードを選ぶ際に重視すべき要素は、主にボードの長さと浮力です。
ゲティングアウト(沖への移動)やテイクオフ(波をつかまえる動作)では、サーフボードの速度が比較的遅いため、揚力はほとんど発生しません。
この段階では、ボードの体積が生み出す浮力が、サーフィンを安定して行うための主な要因となります。

中級者がさらに上達するためには、自分に合った次のステップのサーフボードを選ぶ必要があります。
テイクオフ後にボードの速度が上がると、サーフボードに揚力が発生し始めます。
揚力は主にボトムの接水面から生まれる上向きの力で、その強さは非常に大きなものです。
たとえば、体積が25リットルのサーフボードの浮力は約25kgに相当します。
サーファーの体重が65kgの場合、ライディング中に浮力で支えきれない残りの40kg分は、ボードの速度によって生じる揚力で支えられます。(実際にはサーフボードが完全に水中に沈んでいるわけではないため、揚力の割合はさらに大きくなります)

揚力は浮力と異なり、取り扱いが難しい要素です。
ボードの速度が変化するたびに揚力の大きさも変わり、制御が難しくなることがあります。
具体的には、揚力は速度の2乗に比例して増加します。
そのため、ある速度で安定していたサーフボードが、波の大きなセクションや急激なスピードアップにより速度が2倍になると、揚力は4倍に増加します。
この時、体重は変化しないので、体を支えるための接水面積は逆に4分の1に減少します。
こうした接水面積の変化が、サーフィン中の不安定さを引き起こす原因となります。
例えば、小波用の広いテールを持つサーフボードで大きな波に乗ると、揚力が増加してノーズが浮き上がり、ボトムターンが困難になることがあります。
この現象を経験したサーファーは少なくないでしょう。
ターンがまだ安定しない中級者にとっては、速度変化による揚力の影響を受けにくいサーフボードを選ぶことが重要です。
これにより、ボードの制御がしやすくなり、スムーズなターンやライディングを習得しやすくなります。

 

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