OGMシェイプショップ」カテゴリーアーカイブ

OGM Quad Rear Fin(FUTURE仕様)

OGM Quad Rear Fin(OGM MID DRIVE / Neo-Thruster対応)

OGM 6MとLightSpeedに合わせて開発した、クアッド用リアフィンです。

大きめのサイドフィンが生み出すドライブとホールドを活かしながら、リアフィンをコンパクトにすることで、ターンの抜けを軽くし、スピード感のあるクアッドらしい走りを引き出します。

トライフィンの安定したドライブ感と、ツインに近い軽快なターン性能。

「もっと速く、もっと軽く。」

そんな乗り味を狙った、MID DRIVE / Neo-Thruster 専用設計のリアフィンです。

 

Character

Speed ★★★★☆
Drive ★★★★☆
Control ★★★★★
Release ★★★★☆


OGM Quad Rear Fin

SIZE : Base: 92mm / Depth: 96mm

MATERIAL : Performance Glass

FIN FOILS : 80/20 FOIL

COLOR : SMOKE

CATEGORY : Quad Rear Fin

PRICE : ¥12,600+TAX

 

 

 

ボードはどこで曲がっているのか?

ボードはどこで曲がっているのか?

──本当の支点はテールではありません。

サーファーに
「ボードはどこで曲がっていますか?」
と聞くと、多くの人はこう答えます。

「テール。」

確かにターンでは後ろ足でテールを踏み込みます。
だからテールが回転しているように感じます。

しかし実際には、ボードはテールを中心に回っているわけではありません。

ボードは「支点」を中心に向きを変える

物体が向きを変えるときには、必ず回転の中心となる支点があります。

例えば、

  • コンパス
  • ドア
  • フィギュアスケート

どれも支点を中心に回転しています。

サーフボードも同じです。

ターン中には、ボードのある一点が水をしっかりつかみ、その点を中心としてボード全体が向きを変えています。

ただし、ここで一つ注意があります。

サーフボードはコンパスのように、その場で回転しているわけではありません。

実際には常に前へ進みながら向きを変えています。

つまり、前進運動と回転運動が同時に起きているのです。

さらに、この支点は固定された一点ではありません。

ターンの進行や水の流れに応じて少しずつ移動しながら、ボードの向きをコントロールしています。

物理学では、この回転の中心を瞬間回転中心(Instantaneous Center of RotationICR)と呼びます。

少し難しい言葉ですが、「その瞬間だけ存在する回転の中心」という意味です。

サーフボードは前へ進みながら、このICRが絶えず移動することで滑らかにターンしているのです。

支点になるのはレール

では、その支点はどこなのでしょうか。

答えは、

水を最も強くつかんでいるレールです。

レールが水を切り、
横滑りを止めることで、
その部分が水の中で固定されます。

その固定された場所を中心として、
ボード全体が向きを変えていきます。

つまり、

レールが支点を作っているのです。

テールは支点ではない

後ろ足はテールの上にあります。

だから昔から

「テールを踏めば曲がる」

と言われています。

もちろん、この表現は間違いではありません。

しかし正確には、

テールは支点ではなく、支点を作るためにレールへ荷重を伝える場所なのです。

後ろ足で踏み込むと、

テール側のレールが沈み、
レールが水をしっかりとつかみ、
そこで初めて支点が生まれます。

つまり、

踏んでいる場所と、実際に回転している中心は違うのです。

支点は前へも後ろへも移動する

実は支点は常に同じ場所ではありません。

ターンの種類によって変化しています。

カットバック

カットバックでは比較的前寄りのレールが支点になります。

支点が前方へ移動すると、ボード全体の重心は支点から遠くなります。

そのため慣性モーメントが大きくなり、ボードはゆったりと大きな弧を描いて回転します。

伸びのあるカットバックになる理由です。

トップターン

トップターンでは支点はテール寄りへ移動します。

するとボード全体の重心が支点へ近づき、慣性モーメントが小さくなります。

その結果、少ない力で素早く回転できるようになります。

だからトップターンは鋭く、素早い方向転換が可能になるのです。

ロッカーが強いとなぜ曲がるのか

ここでも支点が重要になります。

ロッカーが強いボードは接水長が短くなります。

すると支点そのものが自然にテール寄りへ移動します。

その結果、ボード全体の重心も支点へ近づき、慣性モーメントが小さくなります。

だから少ない力でボードを回転させることができるのです。

つまり、

ロッカーとは、支点の位置をコントロールする設計でもあるのです。

「接水長が短いから曲がる」という説明だけでは、本当の理由は説明できません。

レール形状でも支点は変わる

レール形状も支点の作られ方に大きく影響します。

シャープレール

シャープレールは水をきれいに切ります。

そのため支点がはっきり生まれ、

反応が速く、
切れ味の鋭いターンになります。

ボキシーレール・丸いレール

一方、丸いレールは水を少し逃がします。

支点が曖昧になり、

回転も穏やかになります。

その結果、

ゆったりとしたスムーズなターンになります。

フィンは何をしているのか

ここで勘違いしやすいのがフィンです。

多くの人は、

「フィンがボードを曲げている」

と思っています。

しかし実際には違います。

フィンの役目は、

横へ流れようとするテールを抑え、

レールが作った支点を維持することです。

支点を作る主役はレール。

フィンは、その支点が逃げないよう支える補助役なのです。

だからフィンだけでは曲がれません。

レールが入って初めてフィンも働き始めます。

だから上手い人ほどレールを使う

初心者は、

ボードを無理にひねって曲げようとします。

しかし上級者は違います。

まずレールを水に入れ、

しっかりと支点を作ります。

その支点を中心として、

ボードは自然に向きを変えていきます。

だから力を使わなくても、

大きく、

速く、

そして美しいターンができるのです。

まとめ

ターンで回っているのはテールではありません。

後ろ足で踏み込むことでレールが水をつかみ、そのレールが支点となってボード全体が向きを変えています。

つまり、

「テールで曲がる」のではなく、「レールが支点を作ることで曲がる」のです。

そして、その支点は固定された一点ではなく、ターン中に刻々と位置を変える瞬間回転中心(ICR)として存在しています。

この視点でサーフボードを見ると、

ロッカー、
レール、
アウトライン、
コンケーブ、
フィン配置──

これらすべてが、

「どこに支点を作り、その支点をどう移動させるか」

という、一つの設計思想につながっていることが見えてきます。

サーフボードデザインとは、単に形を作ることではありません。

水の中にどのような支点を作り、その支点をどう動かすかを設計すること。

それこそが、サーフボードデザインの本質なのです。

 

 

 

 

レールの仕事

レールは何をしているのか?

サーフボードの性能を語るとき、ロッカーやアウトライン、コンケーブの話はよく出てきます。

しかし実は、サーフボードの性能を最も左右している部分は、レールかもしれません。

ところが、多くのサーファーは、
「レールは曲がるためのもの」
くらいの認識ではないでしょうか。

もちろん、それも間違いではありません。

しかし実際には、レールはそれ以上に多くの役割を担っています。レールの形状が変わるだけで、テイクオフの速さも、スピードも、ターン性能も大きく変わるのです。

今回は、レールが担っている4つの重要な仕事をご紹介します。

 

横滑りを止める

サーフボードは、水の上を滑っています。

もしレールがなければ、水をつかむ部分がなく、ボードは簡単に横へ流されてしまいます。

ターン中にレールを水の中へ入れることで、水の抵抗が生まれ、ボードは横滑りすることなく進行方向を変えることができます。

つまり、レールは「水の中のタイヤ」のような役目をしているのです。

レールがしっかり水をつかむほど、ターンは安定し、狙ったラインを維持しやすくなります。

 

水を切る

ボードの前方へ流れてきた水は、レールに沿って後方へ流れていきます。

このとき、レールが適切な形状であれば、水は余分な乱流を起こさず、スムーズに後方へ流れていきます。

その結果、

  • 加速しやすい
  • スピードが落ちにくい

というメリットが生まれます。

反対に、丸すぎるレールでは水がまとわりつきやすくなり、抵抗が増えてしまいます。

これが、小波用ボードとパフォーマンスボードでレール形状が異なる理由の一つです。

 

水を逃がす

レールは、水を「切る」だけではありません。

どこへ、どのように水を逃がすかもコントロールしています。

例えば、ソフトレールでは、水はレールを回り込むように流れます。

一方、ハードレールでは、水はレールのエッジで剥離し、真後ろへきれいに放出されます。

この違いが、

  • スピード
  • 回転性
  • ドライブ感

を大きく左右します。

テール側だけハードレールになっているボードが多いのも、後方で水をきれいにリリースし、効率よくスピードを生み出すためなのです。

 

揚力をコントロールする

実は、これが最も重要な役割かもしれません。

サーフボードは、水に浮いているだけではありません。

走り始めると、ボトム面には飛行機の翼と同じように揚力が発生します。

その揚力を大きく左右しているのが、レール形状です。

レールが丸いほど、水はボードの下側へ回り込みやすくなります。

一方、シャープなレールでは、水が下側へ回り込みにくくなり、揚力の発生位置や大きさが変化します。

つまりレールは、

「どれだけ浮くか」

だけでなく、

「どこで浮かせるか」

まで決めているのです。

前寄りで揚力が発生すればテイクオフは安定しやすくなり、後ろ寄りで発生すればボードは軽快に反応しやすくなります。

レールは、揚力そのものだけでなく、そのバランスまでコントロールしているのです。

この違いが、

  • テイクオフの速さ
  • ボードの浮き上がり方
  • ドライブ感
  • コントロール性能

へとつながっていきます。

 

レールはサーフボードのハンドル

多くのサーファーは、長さや幅、リッター数ばかりを気にします。

もちろん、それらも大切です。

しかし、同じサイズのボードでも、レールを変えるだけで、まったく別の乗り味になります。

サーフボードは、アウトラインだけでも、ロッカーだけでも走りません。

レールが初めて水の流れをコントロールすることで、それまで設計されたすべての性能が初めて引き出されるのです。

だから私は、シェイプの最後に何時間もかけてレールを削ります。

レールには、それだけ大きな仕事があるからです。

サーフボードは、

  • レールで水をつかみ、
  • レールで水を切り、
  • レールで水を逃がし、
  • レールで揚力をコントロールしています。

だからこそ、サーフボードの性能はレールで決まると言っても、決して大げさではありません。

 

 

 

 

 

なぜロッカーが強いと曲がりやすいのか?

サーファーなら誰でも、

「ロッカーが強いボードは曲がりやすい」

と聞いたことがあるでしょう。

では、なぜ曲がるのでしょうか。

よく言われる答えは、

「接水長が短くなるから。」

確かにその通りです。

しかし、それだけでは本当の理由は見えてきません。

今日は、その先を少し掘り下げてみたいと思います。

 

ボードは水の上を滑っている

サーフボードは走っているとき、ボード全体が水に浸かっているわけではありません。

実際には、ボトムの一部だけが水圧を受けながらプレーニングしています。

つまり、ボードは「浮いている」というよりも、水の上を「滑っている」状態なのです。

そのため、実際に水がボードを支えている長さが、ボードの動きに大きな影響を与えます。

 

接水長が長いと何が起きる?

想像してみてください。

2mのスキー板と、1mのスケートボード。

どちらが小さく回れるでしょうか。

もちろんスケートボードです。

サーフボードも同じです。

水に支えられている長さが長いほど、ボードは直進しようとする力が強くなります。

つまり、

直進安定性が高くなる

ということです。

その代わり、向きを変えようとすると、その長い接水部分全体の向きを変えなければならないため、大きな力が必要になります。

 

ロッカーが強いと回転半径が小さくなる

ここが一番重要なポイントです。

ロッカーが強くなると、実際に水圧を受けてプレーニングしている長さが短くなります。

すると、ボードはより小さな円を描いて向きを変えられるようになります。

これは車でも同じです。

大型バスは小回りが苦手ですが、軽自動車は狭い道でもクルッと向きを変えられます。

サーフボードも、水に支えられている長さが短いほど、回転半径が小さくなります。

その結果、

「クイックに動く」

「板が返ってくる」

という感覚になるのです。

もちろん、回転半径は接水長だけで決まるわけではありません。

どこまで水がボードを支えているか、そしてどこに体重をかけて回転の支点を作るかによっても変わります。

しかし、ロッカーによって接水長が短くなることは、ターン性能を左右する大きな要素の一つです。

 

水圧が掛かる範囲も変わる

ロッカーが弱いボードでは、水圧は比較的長い距離にわたってボトムを支えます。

そのため、安定した走りになり、高いスピードを維持しやすくなります。

一方、ロッカーが強いボードでは、水圧がしっかり掛かる範囲は足元付近に集中します。

つまり、プレーニングしている部分が短くなり、ボード全体が向きを変えやすくなるのです。

 

レールが働く位置も変わる

ターンでは、レールが水を受け止め、横方向へ水を押し出すことでボードの向きを変えています。

ロッカーが弱いボードでは、水に接しているレールが長くなるため、その長いレール全体が抵抗として働きます。

そのため、方向を変えるには大きな力が必要になります。

一方、ロッカーが強いボードでは、実際に強く働くレールは足元付近に集中します。

その結果、小さな力でもボードの向きを変えやすくなり、

「動きが軽い」

と感じるのです。

 

曲がりやすい=良いボードではない

ここが最も重要なポイントです。

ロッカーを強くすれば、確かに曲がりやすくなります。

しかし、その一方で接水長が短くなり、水圧を受ける面積も減るため、スピードは落ちやすくなります。

逆にロッカーを弱くすると、スピードは出やすくなりますが、ターンにはより大きな力が必要になります。

つまりロッカーとは、

「曲がりやすさ」と「スピード」のバランスを決める設計

なのです。

 

数ミリがボードの性格を変える

だからトップシェイパーは、単純にロッカーを強くしたり弱くしたりしているわけではありません。

そのサーファーが、

どんな波に乗るのか。

どんなラインを描きたいのか。

どんなターンをしたいのか。

それらを考えながら、数ミリ単位でロッカーを決めています。

ロッカーは、単に「曲がるため」のものではありません。

スピード、回転性、安定性、そのすべてのバランスを決める、サーフボード設計の中でも最も重要な要素の一つです。

その数ミリが、一本のボードの性格を大きく変えてしまうのです。

 

 

 

 

 

マジックボードとは?

サーファーが長くサーフィンを続けていると、時々そんな一本に出会うことがあります。

テイクオフが異常に速い。
無理をしている感覚がないのにスピードが伸びる。
ターンで失速しない。
波との一体感があり、まるでボードが自分の体の一部になったように感じる。

そんな特別な一本を、サーファーたちは昔から「マジックボード」と呼んできました。

もちろん、本当に魔法がかかっているわけではありません。

同じボードを他のサーファーが乗ったら、普通に感じることもあります。

逆に、ある人が手放したボードが、別の人にとって最高の一本になることもあります。

では、マジックボードの正体は何なのでしょうか。

私は、その正体は「相性」だと考えています。

サーフボードには、それぞれ設計者が意図した性能があります。

速く走るためのデザイン。
大きなターンを描くためのデザイン。
小波でスピードを出しやすいデザイン。
ホレた波で性能を発揮するデザイン。

しかし、その性能はボード単体で存在するものではありません。

実際にその性能を引き出すのはサーファーです。

どこに立つのか。
どのタイミングで荷重するのか。
どれくらい体を使うのか。

同じボードでも、乗る人によってまったく違う動きをします。

だからこそ、本当に調子の良いボードとは、単に評価の高いボードではありません。

自分の感覚や体格、筋力、リズム、そして目指すサーフィンと一致したボードです。

ボードの設計とサーファーの操作が噛み合ったとき、必要以上に力を使わなくても自然に加速し、自然に曲がるようになります。

その状態になると、サーファーはボードを操作しているという感覚よりも、波と対話しているような感覚になります。

これが、多くのサーファーが「マジックボード」と呼ぶ感覚の正体なのだと思います。

そしてもうひとつ大切なことがあります。

マジックボードは、必ずしも最新のボードとは限りません。

高性能なボードとも限りません。

世界チャンピオンが乗るボードとも限りません。

むしろ、自分の現在のレベルに合い、自分の技術を自然に引き出してくれるボードこそがマジックボードになることが多いのです。

サーフィンはボードをコントロールするスポーツです。

だから、自分の入力に対して素直に反応してくれるボードほど上達しやすくなります。

逆に、自分には難しすぎるボードでは、本来覚えるべき技術よりも、ボードを抑え込むことに意識を使ってしまいます。

マジックボードとは、今の自分を楽にしてくれるだけのボードではありません。

今の自分の技術を最大限に引き出し、その先のレベルへ導いてくれるボードです。

私は長年シェイパーとして、多くのサーファーのボードを削ってきました。

そして、お客様から

「今度のボード、調子が良い!」

と言われる瞬間が何より嬉しく感じます。

その一本のおかげで、もっと波に乗れるようになった。
もっとスピードが出せるようになった。
もっとターンが楽しくなった。

そんな変化が生まれたとしたら、そのボードは単に調子が良いだけではありません。

サーファーの成長を支えてくれる一本になっているのです。

もしかすると、その一本が、その人にとってのマジックボードになるのかもしれません。

 

 

 

快適なボードを手に入れるために

サーファーなら誰でも、もっと楽に波に乗りたいと思います。

もっと早くテイクオフしたい。
もっとスピードが欲しい。
もっと思い通りに曲がりたい。

そのために多くの人は、浮力や長さ、幅やリッター数を気にします。

もちろんそれらも大切です。

ですが、本当に快適なサーフボードとは、単純に大きいとか小さいとか、浮力が多いとか少ないとか、そんな単純な話ではありません。

なぜならサーフボードは、自動車やバイクのようにエンジンを持っていないからです。

アクセルを踏めば加速するわけではありません。

サーフボードは、波のエネルギーを利用して走る乗り物です。

そのため、ボード自体が効率よく揚力を生み、抵抗を減らし、波のパワーをスピードへ変換できる設計になっていることが重要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

どれほど優れた設計のボードであっても、乗る人との相性が悪ければ、その性能を引き出すことはできません。

サーフィンでは、波の変化に合わせて体重移動を行いながら、スピードをコントロールしています。

どの位置に立つのか。
どのタイミングで荷重するのか。
どのくらいボードを傾けるのか。

そのすべてが無意識に行われています。

だからこそ、自分の体重や体格、筋力、反応速度、そして目指すサーフィンに合ったコントロール性を持つボードであることが非常に大切なのです。

ボードが自分の感覚と一致すると、余計な力を使わなくても自然に加速し、自然にターンできるようになります。

頑張って乗るのではなく、ボードが自分の動きについてくる。

そんな感覚が生まれます。

そして実は、ここで大切なのは「上手いか下手か」ということではありません。

快適なボードに乗れているかどうかは、現在の技術レベルの話ではなく、そこから先に上達できるかどうかの話なのです。

どんなに経験豊富なサーファーでも、自分に合っていないボードに乗れば、本来できるはずの動きができなくなります。

逆に、まだ経験の浅いサーファーでも、自分に合ったボードに乗れば、正しい動きを覚えやすくなり、上達のスピードは大きく変わります。

サーフィンは、ボードをコントロールする技術を身につけていくスポーツです。

そのためには、自分が入力した動きに対して、ボードが素直に反応してくれることが重要です。

無理をしなければ曲がらないボードや、必要以上に不安定なボードでは、サーファーはボードを操ることよりも、ボードに振り回されることに意識を使ってしまいます。

快適なボードとは、今の自分を楽にしてくれるだけの道具ではありません。

今の自分の技術を正しく引き出し、その先のレベルへ導いてくれる道具でもあるのです。

そして長くサーフィンを続けていると、時々そんな一本に出会うことがあります。

テイクオフが驚くほど速い。
無理をしている感覚がないのにスピードが伸びる。
ターンで失速しない。
まるでボードが自分の体の一部になったように感じる。

サーファーたちは昔から、そんな特別な一本をある名前で呼んできました。

「マジックボード」

次回は、そのマジックボードの正体についてお話ししたいと思います。

 

 

 

なぜ速いボードほど難しくなるのか

なぜ速いボードほど難しくなるのか」

前回、サーフボードには

  • 浮力
  • 揚力

という二つの力が働いているという話をしました。

浮力はボードの容積によって生まれる静的な力。

それに対して揚力は、水流によって生まれる動的な力です。

そして実は、この「動的である」ということが、サーフボードを面白くも難しくもしているのです。

揚力は速度の二乗で増える

揚力には大きな特徴があります。

それは、

速度が上がるほど急激に増える

ということです。

航空力学では、揚力はおおよそ速度の二乗に比例するとされています。

つまり、

時速20kmで発生する揚力を1とすると、

時速40kmでは約4倍、

時速60kmでは約9倍になります。

サーフボードも基本的には同じです。

少しスピードが上がっただけでも、ボードが受ける揚力は大きく変化します。

波が変わればボードも変わる

ここで問題が出てきます。

サーフィンではボードの速度を一定に保つことができません。

小波と頭オーバーの波では速度がまったく違います。

同じ波でも、

  • テイクオフ直後
  • ボトムターン中
  • カットバック中

では速度が変わります。

つまり揚力も常に変化しています。

ボードは浮き上がろうとする

速度が上がると揚力が増えます。

するとボードは水の中に沈み込まなくなり、水面近くを軽く走るようになります。

これは一見良いことのように思えます。

実際、

  • 抵抗が減る
  • スピードが出る
  • 軽く感じる

というメリットがあります。

しかし同時に別の現象も起こります。

接水面積が減る

速度が上がると揚力が増えます。

サーファーの体重そのものは変わりません。

ですが、その重さを支える方法が変わります。

止まっている時は主に浮力によって支えられていますが、スピードが出ると揚力がその一部を受け持つようになります。

するとボードは水の中に深く沈む必要がなくなり、水を押しのける量も少なくなります。

その結果、水と接している面積が減っていくのです。

接水面積が減ると抵抗は減ります。

だから速くなります。

しかし接水面積は、実は「グリップ」でもあります。

タイヤで考えると分かりやすいでしょう。

路面との接地面積が減れば速く転がりますが、コントロールは難しくなります。

サーフボードも同じです。

速いボードが難しい理由

上級者向けの高性能ボードに乗ったとき、

「速いけど難しい」

と感じることがあります。

これは単にボードが小さいからではありません。

揚力が強く発生し、

接水面積が減り、

水とのつながりが薄くなるからです。

ボードは速くなりますが、

同時にシビアになります。

ほんの少し体重移動が遅れただけでラインを外し、

少し踏み込み過ぎるとレールが抜ける。

これは揚力によって生まれる宿命とも言えます。

揚力は制御が難しい

さらに厄介なのは、

浮力はほぼ一定なのに対して、

揚力は常に変化することです。

波のサイズ。

波のパワー。

サーファーの体重。

立つ位置。

ターンの角度。

ボードの傾き。

これらすべてによって揚力は変化します。

つまり揚力は、

シェイパーが完全にコントロールできる力ではありません。

できるのは、

「どんな条件で、どんな揚力が発生しやすいか」

を設計することだけです。

最終的には波とサーファーが完成させる力なのです。

ボード設計とは揚力との付き合い方

サーフボード設計の歴史は、

ある意味で揚力との戦いだったと言えるかもしれません。

もっと揚力を増やせば速くなる。

しかし増やしすぎれば不安定になる。

もっと接水面積を減らせば軽くなる。

しかし減らしすぎればコントロールできなくなる。

シェイパーはそのバランスを探し続けています。

なぜ年齢とともにボードが変わるのか

若い頃は、

多少シビアでも揚力の強いボードが魅力的に感じます。

速く、

軽く、

反応が鋭いからです。

しかし年齢を重ねると、

少し接水感があり、

少し安定し、

少し余裕のあるボードが心地よくなってきます。

それは技術が落ちたからではありません。

揚力だけではなく、

浮力や安定性とのバランスを楽しめるようになるからです。

本当に良いボードとは何か

サーフボードの性能は、単純に揚力が大きければ良いわけではありません。

揚力は速度の二乗で増加し、波やサーファーの動きによって常に変化します。

そして揚力が増えるほど接水面積は減り、スピードは増しますが、そのぶんコントロールはシビアになります。

だから本当に優れたサーフボードとは、単純に速いボードではなく、

必要な揚力を発生させながら、必要な接水感も残しているボード

なのだと思います。

速さだけでもない。

安定性だけでもない。

その両方を、乗り手や波の条件に合わせて高い次元で両立させること。

それが優れたサーフボードの条件です。

シェイパーの仕事とは、単に浮力を配置することではありません。

波の中で刻々と変化する揚力と接水感、そのバランスをどう作るかをデザインすることなのです。

だからサーフボード選びは、単純なリッター数やサイズ選びでは終わりません。

どんなボードにも得意な領域があり、万能なボードは存在しません。

どんな揚力を求め、どんな接水感を求めるのか。

そのバランスを探していくことが、自分に合った一本に出会う近道なのだと思います。

OGM Surfboards

 

 

浮力と揚力

なぜ小さなボードでも波に乗れるのか?

サーフボードの話になると、よく出てくるのが「浮力」という言葉です。

「このボードはリッター数が大きいから浮力がある」
「もっと浮力のあるボードにした方がいい」

確かに間違いではありません。

ですが実際には、サーフボードを支えている力は浮力だけではありません。

サーフボードには、もう一つ重要な力があります。

それが「揚力」です。

浮力とは何か?

浮力は、水の中に沈んだ物体を押し上げる力です。

サーフボードの容積(リッター数)が大きいほど、より大きな浮力を得ることができます。

そのため浮力が大きいボードは、

  • パドリングが楽
  • テイクオフしやすい
  • 水に沈みにくい

という特徴があります。

初心者向けボードやロングボードが乗りやすいのは、この浮力が大きいからです。

しかし、ここで一つ疑問が生まれます。

なぜ小さなショートボードでも浮くのか?

例えば体重70kgのサーファーが乗るショートボード。

ボードの容量は30L前後しかありません。

単純に考えれば、70kgの人間を支えるには全く足りないように思えます。

それでもサーファーは問題なく波に乗り、スピードを出し、ターンをしています。

なぜでしょうか。

それはサーフボードが走り始めると、「浮力」だけでなく「揚力」が発生するからです。

揚力とは何か?

揚力とは、水や空気の流れによって生まれる力です。

飛行機の翼が空を飛べるのも揚力のおかげです。

実はサーフボードも同じです。

ボードが前進すると、ボトム(ボード裏面)に水流が発生します。

この水流によってボードには上向きの力が生まれます。

これが揚力です。

つまり、

  • 止まっている時は浮力で浮き、
  • 走り始めると揚力でも支えられる

ようになります。

サーフボードは「船」より「飛行機」に近い

多くの人はサーフボードを船のようなものだと思っています。

しかし実際には、スピードが出ている時のサーフボードは飛行機の翼に近い働きをしています。

特に現代のショートボードは、

  • ボトム形状
  • ロッカー
  • コンケーブ
  • レール形状

などを利用して効率的に揚力を発生させています。

だから見た目以上に小さいボードでも走ることができるのです。

浮力だけではボードは選べない

最近はボード選びでリッター数ばかりが注目される傾向があります。

もちろん浮力は重要です。

ですがサーフボードの性能は浮力だけでは決まりません。

例えば同じ35Lでも、

  • 速く揚力が発生するボード
  • なかなか揚力が発生しないボード

があります。

また同じリッター数でも、

  • テイクオフが異常に速いボード
  • 動きは軽いが走り出しが遅いボード

があります。

これは単純な容積ではなく、水の流れをどう作るかという設計の違いです。

シェイパーが見ているもの

シェイパーがボードを設計するとき、単純にリッター数だけを見ているわけではありません。

どの位置に浮力を配置するのか。

どこで水を受けるのか。

どのスピード域で揚力を発生させるのか。

ターン中にどのように揚力をコントロールするのか。

そうした要素を総合的に考えながらボードを作っています。

同じ30Lでも全く別物のボードになるのは、そのためです。

リッター数だけでは見えないもの

サーフボードには大きく分けて二つの力があります。

浮いている時に働く「浮力」。

走り始めてから働く「揚力」。

初心者のうちは浮力の恩恵が大きく、上達するにつれて揚力を活かしたボードが面白くなってきます。

そして本当に調子の良いボードというのは、単に浮力が大きいボードではありません。

必要な浮力を持ちながら、早い段階で効率よく揚力を発生させられるボードです。

リッター数だけでは説明できない「乗り味」の違いは、実はこの浮力と揚力のバランスの中にあります。

サーフボードの設計とは、浮力と揚力をどう組み合わせ、どうコントロールするかを考えることでもあります。

数字では表せない乗り味の差が生まれる理由は、そこにあるのかもしれません。

OGM “ogama” 小川昌男

 

 

 

 

サーフィンって、結局カーブなんだよ

「サーフィンって、結局カーブなんだよ。」

これは、1987年公開のサーフィン映画
All Down the Line』の中で、若き日の Tom Carroll が、まだ子供だった Danny Wills に語った言葉です。

この映画で強く印象に残るのは、Gランドでのトム・キャロルのライン取りとレールワーク。
深いボトムターンの弧。
波のフェイスに沿って伸びていくライン。
レールを使った円運動。
そして、スピードを殺さないカービング。

サーフィンは、ただ速く走ることでも、派手な技をすることでもなく、
波のカーブと、自分の描くカーブを美しくつなげていくものなのだと、この映画は教えてくれました。

直線ではなく、カーブ。

自分は、こんなサーフィンをしたい。
そして、こんなサーフィンができるサーフボードを作りたい。

波の力を無理に押さえ込むのではなく、
波の曲線に自然に寄り添いながら、スピードとターンが途切れずにつながっていく。
そんなサーフィンに、ずっと惹かれてきました。

今、自分がサーフボードを削る時も、頭の中にあるのはやはりこの感覚です。

速さだけでもない。
動きの軽さだけでもない。

レールが波のフェイスに自然に入り、
無理なく美しいカーブを描き続けられること。

ターンをきっかけに減速するのではなく、
ターンそのものがスピードになっていく感覚。
波とぶつかるのではなく、波と調和しながら走っていく感覚。

そういうサーフィンを可能にするために、
アウトライン、ロッカー、レール、ボトム――
サーフボードのすべては存在しているのだと思っています。

今振り返ると、
自分が長い間追い続けてきたサーフィンの感覚も、
自分が削り続けたいと思っているサーフボードの方向性も、
あの映画を見た時、すでに心のどこかで決まっていたのかもしれません。

OGM “ogama” 小川昌男

 

 

魔法のボード

サーファーが忘れられない一本

「このボード、なんだか違う。」

サーフィンを長く続けていると、そんな感覚に出会うことがあります。

テイクオフが異常に速い。
無理をしている感じがないのに、自然にスピードが伸びる。
ターンで失速せず、波とボードが勝手につながっていく。
そして何より、サーフィンそのものがいつもより楽しく感じる。

そんな一本を、サーファーは昔から「マジックボード」と呼んできました。

もちろん、サーフボードに本当の魔法がかかっているわけではありません。
ですが、乗った瞬間に「これだ」と感じるボードが存在するのは事実です。

では、その違いはどこから生まれるのでしょうか。

サーフボードの性能は、
アウトライン、ロッカー、ボリューム、レール、ボトム形状――
さまざまな要素の組み合わせで決まります。

ですが、本当に大切なのは、
そのボードが「誰に乗られるのか」です。

同じボードでも、ある人には最高でも、別の人にはまったく合わないことがあります。

なぜならサーフィンは、
ただボードに乗れば進むものではないからです。

波のどこを走るのか。
どのタイミングで体重を移動するのか。
どんなテンポでターンするのか。

サーファーそれぞれに、無意識のクセやリズムがあります。

そして本当に調子の良いボードは、
その人の感覚や動きと自然につながります。

頑張って動かすのではなく、
「乗っているだけで合ってくる」。

それが、魔法のように感じる理由なのかもしれません。

面白いのは、
マジックボードは必ずしも「最新」でも「高性能」でもないことです。

見た目は普通。
サイズも特別ではない。
なのに、なぜか手放せない。

そんなボードを持っているサーファーは、意外と多いものです。

そして、その一本との出会いが、
サーフィンそのものを変えてしまうことがあります。

波に乗る回数が増える。
難しかった波が楽しくなる。
もっと海に行きたくなる。

サーフボードは、ただの道具かもしれません。

ですが時に、サーフィン人生そのものを変えてしまう一本があります。

まだそんな一本に出会えていない方も、
焦る必要はありません。

本当に自分に合ったボードに出会えた時、
サーフィンの景色は大きく変わります。

だからこそ私は、
一本一本のボードを削るたびに思います。

「このボードが、誰かにとっての魔法の一本になるかもしれない」と。

OGM “ogama” 小川昌男