「えっ、おかしいな? いつもなら5~6点は出るのに、今回は4点か…。
この試合のジャッジは俺のことが嫌いなのかな?」
こんな話を聞いたことがある人もいるかもしれません。
でも、安心してください。
ジャッジは選手の好き嫌いで点数をつけることはありません。
しかし、同じようなライディングでもスコアが変わることは実際にあり得るのです。
今回は、その理由を採点の仕組みから説明します。
サーフィンのスコアは固定ではない
サーフィンの採点は、「特定の技をしたら何点」といった絶対的な基準では決まりません。
例えば、「オフザリップを2回してカットバックをしたから5点」といったルールは存在しません。
また、10点満点の基準も固定ではありません。
例えば、WCT(ワールドチャンピオンシップツアー)では、タヒチやパイプラインの大波での10点もあれば、オンショアのジャンクな腰波での10点もあります。
同じ10点でも、ライディングの内容はまったく異なります。
さらに、ディビジョン(クラス)によっても評価基準は異なります。
プロクラスの10点と、ビギナーズクラスの10点は当然ながら違うものです。
このように、スコアは環境やクラスによって変わるため、サーフィンの採点には相対評価が用いられます。
相対評価とは?
サーフィンのスコアリングでは、絶対的な基準ではなく、その試合の波のコンディションや他の選手のライディングと比較して点数が決められます。
試合は「ヒート」と呼ばれる小さなグループ(2~4人)で行われ、勝ち上がった選手が次のラウンドで新しいヒートを作って戦うトーナメント方式です。
この方式により、同じヒートの選手は同じ条件で競うことになり、不公平が少なくなります。
ジャッジは新しいライディングを見たとき、同じヒートのスコアシートの中から、クオリティが最も近いライディングを基準として考えます。
その基準より良ければ高いスコア、劣っていれば低いスコアがつけられます。
例えば、
今のライディングはこのヒートのRedの3本目(4.5点)より良く、Yellowの2本目(5.0点)より劣る → 4.7点
というように判断されるのです。
ジャッジは感情で採点しない
ジャッジは雰囲気や気分でスコアをつけるわけではありません。
そのヒート中のライディングを記憶し、マニューバ(技)の分析を行い、他の選手との比較をしてスコアを決めます。
記憶が曖昧な場合はリプレイシステムを使って検証しながら、ヒート中ずっとこれを繰り返します。
「4点しか出なかった」と感じるのは、すでに他の選手のライディングに対して4.5点が確定しているため、それより評価が低いと判断されたからです。
逆に「6点がついた」のは、それより悪いライディングに5.5点がついているためです。
ただ、それだけのことなのです。
試合中は、1本のスコアに一喜一憂するのではなく、もしスコアが伸びないと感じたら「相手のサーファーのライディングの方が良かった」と考えてください。
相手より優れたライディングをすることで、はじめてそれ以上のスコアを得ることができるのです。