スコアーのしくみ(その2)

1268

「残り時間1分!」
「ホワイトの選手乗りました、2位レッドの選手を逆転するために必要なスコアーは
5.18ポイント!」

そんな時、ジャッジは何を考えているのかを話しますね。
これはあくまでも私の点数の決め方ですが、他のジャッジたちもたぶん似たようなことを考えてスコアーしていると思います。

まず逆転スコアーの5.18ポイントですが、アナウンスがずっとガンガン言っているのでとうぜん頭の中に入っています。
でも、私は自分がこのスコアーを入力したら逆転するとか、しないだとか、あまり深く考えていません。
なぜなら、発表されるスコアーは他のジャッジと作っている平均点なので、自分の点数だけでは決まらないからです。
しかも、大きすぎるスコアーや小さすぎるスコアーは、コンピュータにはじかれてアベレージに反映されなくなるシステムになっています。

この時、私たちジャッジがすべきことはただ一つ、冷静に考え、自分の意見としてのスコアーを入れることだけです。

ヒートが始まったばかりであれば、わりと広い範囲の中でスコアーを決定できますが、ヒート終了間際になって来ると、ジャッジシートの中にたくさんの確定したスコアーが存在してきます。
ヒートの後半で新たなライディングをスコアーするときは、すでに入力した自分の点数ををしっかりと考慮しながら採点しないと試合の結果を違ったものにしてしまいます。

CCI20160211_00000

上のスコアーシートを見ながらさっきのシチュエーションを考えてみます。

終了間際に乗ったホワイトの選手のライディングが5.0点あたりに来るだろうなと思ったならば、それと近いライディングだと考えられるイエローの3本目の5.0点ライドがどのような内容であったかを頭に思い浮かべてみます。
「最初のマニューバはちょっと甘かったけど、2回目のはわりときびしかった。3回目のカットバックも悪くなかったな」
こんな感じです。

それに対して今回乗ったホワイトの6本目のライディングを思い出してみます。
「なかなか良いターンも入っていて、うまくまとめたライディングだったけど、イエローの2個目のマニューバのようなきびしいターンは入っていなかったぞ」
ここで私は5.0点以上出せないことを認識します。
この段階で少なくとも私のスコアーシートの中では、ホワイトの逆転は無くなりました。

こんどはその下のスコアーであるレッドの4本目の4.5点ライドと比較してみます。
「たしかきれいなコンビネーションのターンだったけどパワーが足りなかったかな、あのレッドのライディングよりも今回のホワイトの方が良いサーフィンだと思う」
これでホワイトには4.5点以上のスコアーを入れるべきだという結論に達します。

その考えからすると、私がホワイトに対して使えるスコアーは4.6、4.7、4.8、4.9しかありません。
イエローのライディングに近ければ4.8を、レッドに近ければ4.7を、限りなくイエロー近いと思えば4.9を使います。
このようにヒートの後半では、使えるスコアーがかなり限定的なものとなってきます。
ジャッジはライディングの雰囲気や思いつきでスコアーを決定しません。

スコアーは互いに違いますが、他のジャッジたちもそれぞれこんなことを考えながらスコアーを付けています。
そして、上下2人のスコアーはカットされ、真ん中3人のスコアーの平均点が発表されます。
このときホワイトの選手が逆転するとかしないとかは、ジャッジ個人の意識の中にはありません。

このようにして付けられているスコアーは、1本1本バラバラに付けられているスコアーと違って、あるときにはきびしく、あるときには甘く感じることが起こるかもしれません。
良く観客の中で、
「今のライディングは最低でも5.2ポイントはあったはず、このジャッジの点数はおかしい」
などと評価する人がいますが、そのライディング1本だけではなく、そのヒートの最初から最後まで、すべてのスコアーを見てもらえれば、妥当なスコアーだったということがわかっていただけると思っています。