これからの時代のシェイパー

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優れたシェイパーは、優れたサーファーか?

優れたシェイパーであるためには、優れたサーファーであることが不可欠だと言われています。
その理由は、サーフボードに作用する力が流体力学やアルキメデスの原理に基づいているとはいえ、波という三次元的に歪んだ曲面上を滑走するため、非常に複雑で解析が難しいからです。

このため、サーフボードのデザインには理論的なアプローチだけでなく、実際のライディング経験に基づいた感覚的な理解が重要となります。
シェイパーが生み出したサーフボードは、実際に波に乗って初めてその性能が評価されます。
そして、ボードデザインを変えた際に生じる乗り味の違いを、誰よりも的確に体感し判断できる能力がシェイパーには求められます。
シェイパーは、頭だけでなく、自らの身体でボードデザインを理解する必要があるのです。
こうした背景から、「優れたシェイパーは優れたサーファーである」と言われています。

 

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では、優れたサーファーは優れたシェイパーか?

従来の答えは「NO」でした。シェイパーには、頭の中にあるデザインを具体的な形にする技術が求められます。
サーフボードは複雑な三次曲面で構成されており、それを美しく削り上げる作業は非常に難しく、まともな形のボードを作るだけでも、最低1000本はシェイプしないと習得できないと言われてきました。

しかし近年、優れたシェイプマシンと使いやすいソフトウェアの登場により、このハードルは下がりつつあります。
シェイプマシンで荒削りされたボードは最終的に手作業で仕上げる必要がありますが、その作業には高度な技術は求められません。
その結果、一部の優れたサーファーが、優れたサーフボードをシェイプすることが可能になってきています。

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サーフボードシェイプの新時代

サーフボードのシェイプは、新たな時代へと突入しました。
これは単にハンドシェイプかマシンシェイプかという削り方の違いを指すのではなく、これまで一体だった「職人的な技術」と「ボードの特性(乗り味)」が分離され、サーフボードが純粋に性能で評価される時代になってきたということです。

シェイプマシンはあくまで道具に過ぎません。
重要なのは、デザインを変更したときにボードの性能がどう変化するのかを、理論的・体感的・直感的に予測し、理解し、分析する想像力です。
ボードの見た目の美しさも重要ですが、それ以上に大切なのは性能です。
サーフボードを走らせるのは、紛れもなく物理学です。
見た目だけでなく、数学的・力学的にも美しく、高性能なサーフボードを生み出すことが、シェイパーの役割です。

 

「似て非なるもの」

しかし、精密なシェイプマシンの開発が進むにつれ、音楽の世界と同じようにコピーが出回る時代がやってきました。
本来、サーフボードのデザインには長年の経験と試行錯誤が詰まっています。
けれども、シェイプデータさえあれば、誰でも簡単に形だけは再現できてしまう時代になったのです。
しかし、形だけを真似したボードと、本当に機能するボードには決定的な違いがあります。

これからのシェイパーには、従来の職人的技術だけでなく、デザイナーやエンジニアとしての能力がより一層求められる時代が訪れています。
単なるコピーではない、独自の理論と経験に基づいたシェイプを提供することこそが、本物のシェイパーの価値なのです。

 

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